ぼくらは群青を探している
「……そもそも、一昨日の事件の発端って、深緋のメンバーが──違うか、能勢さんによれば白聖高校の人達だったわけだけど、その二人組が群青のOBを騙って、休憩所の外で陽菜に声をかけたこと、なんだよね」
私と陽菜が仲が良いことは、私の“体が弱い”話と違って、それを知ってること自体がなにかキーになるものではない。ただ、私と陽菜はセットで動いていることを前提に企むことができるのは、限られた人間だけだ。
「でも私が拉致された後、陽菜は襲われなかった。つまり最初から狙いは私だった。陽菜に声をかけたのは、もともとは私を拉致するためだった。ということは、休憩所の外にいる陽菜を見ただけで、私が傍にいるって判断できたってことになる」
「つまり、池田と三国が一緒に祭りに来てるってことをもともと知ってただろうってことか。三国の写真は出回ってんだろうし、祭りでたまたま三国を見かけて、俺らと離れる隙を狙ってたって可能性も考えられる。でも群青のOBを騙ったってことは、咄嗟にやったことじゃない、最初から群青のOBを騙って三国を騙して連れて行く予定だった」
打てば響く答えは気持ちがいい。雲雀くんの返事に「そう」と深く頷いた。
「しかも群青のOBを騙るときも、それなりに手が込んでた。当時の群青の姫の名前を出すとか、蛍さんの話をするとか、とにかく具体的な話をして信憑性を持たせようとしてた。その場で臨機応変に対応した範囲内とも考えられるけど、そこまで頭が回るようには見えなかった。準備してたって考えるほうが自然」
「で、その計画を立てることができたってことは、三国と池田がセットで夏祭りに行くことを前から知ってた……。しかも、結局未遂で終わってはいるけど、三国の拉致それ自体は目的じゃなかっただろうな。例によって狙いは俺達か群青だ」
「ちょうど同じ時間帯に駅前で永人さん達も足止めされてたって考えると、英凜の拉致とセットで考えたほうがいいよなー。俺達と永人さんが合流すると英凜が一人になる隙が少なくなるから足止めしてたんだよな、きっと」
桜井くんも、まるで別人のように頭の回転が速い。もしかしたら普段話しているときはスイッチを切っているのかもしれない。何様だという話だけれど、つい感心してしまった。
「となると、三国と池田と、ついでに俺達が四人で祭りに行くって知ってたヤツが怪しい、ってことか。俺ら四人で祭り行くって、教室で話したよな」
「そう。だから、群青の先輩達は知ってる。……それから、私は、休憩所に入る前に、九十三先輩に、メールで居場所を伝えてた」
二人は黙り込んだ。それは、群青の先輩達が私を狙いやすくなる、最も分かりやすい材料だから。
「……いや、いやいや」桜井くんは悪夢であるかのようにパタパタと手を横に振って「それって、群青の先輩がマジで全員グルになってる可能性あるってことだろ? そんなことある?」
「さすがに全員グルとは言えないと思う。あくまで九十三先輩へのメールの内容を知ることができた、あの日一緒に補習を受けてた先輩達の中に、深緋に情報を流した人がいるかもしれないっていう程度」
「……ってなると、怪しいのは誰だ?」
ふーむ、と桜井くんは考え込む。
「せめて新庄と関係ないのは誰かくらい絞りたいよな……」
「そういえば、九十三先輩は大丈夫だってのはなんでだったんだ?」
「なにそれ」
私と陽菜が仲が良いことは、私の“体が弱い”話と違って、それを知ってること自体がなにかキーになるものではない。ただ、私と陽菜はセットで動いていることを前提に企むことができるのは、限られた人間だけだ。
「でも私が拉致された後、陽菜は襲われなかった。つまり最初から狙いは私だった。陽菜に声をかけたのは、もともとは私を拉致するためだった。ということは、休憩所の外にいる陽菜を見ただけで、私が傍にいるって判断できたってことになる」
「つまり、池田と三国が一緒に祭りに来てるってことをもともと知ってただろうってことか。三国の写真は出回ってんだろうし、祭りでたまたま三国を見かけて、俺らと離れる隙を狙ってたって可能性も考えられる。でも群青のOBを騙ったってことは、咄嗟にやったことじゃない、最初から群青のOBを騙って三国を騙して連れて行く予定だった」
打てば響く答えは気持ちがいい。雲雀くんの返事に「そう」と深く頷いた。
「しかも群青のOBを騙るときも、それなりに手が込んでた。当時の群青の姫の名前を出すとか、蛍さんの話をするとか、とにかく具体的な話をして信憑性を持たせようとしてた。その場で臨機応変に対応した範囲内とも考えられるけど、そこまで頭が回るようには見えなかった。準備してたって考えるほうが自然」
「で、その計画を立てることができたってことは、三国と池田がセットで夏祭りに行くことを前から知ってた……。しかも、結局未遂で終わってはいるけど、三国の拉致それ自体は目的じゃなかっただろうな。例によって狙いは俺達か群青だ」
「ちょうど同じ時間帯に駅前で永人さん達も足止めされてたって考えると、英凜の拉致とセットで考えたほうがいいよなー。俺達と永人さんが合流すると英凜が一人になる隙が少なくなるから足止めしてたんだよな、きっと」
桜井くんも、まるで別人のように頭の回転が速い。もしかしたら普段話しているときはスイッチを切っているのかもしれない。何様だという話だけれど、つい感心してしまった。
「となると、三国と池田と、ついでに俺達が四人で祭りに行くって知ってたヤツが怪しい、ってことか。俺ら四人で祭り行くって、教室で話したよな」
「そう。だから、群青の先輩達は知ってる。……それから、私は、休憩所に入る前に、九十三先輩に、メールで居場所を伝えてた」
二人は黙り込んだ。それは、群青の先輩達が私を狙いやすくなる、最も分かりやすい材料だから。
「……いや、いやいや」桜井くんは悪夢であるかのようにパタパタと手を横に振って「それって、群青の先輩がマジで全員グルになってる可能性あるってことだろ? そんなことある?」
「さすがに全員グルとは言えないと思う。あくまで九十三先輩へのメールの内容を知ることができた、あの日一緒に補習を受けてた先輩達の中に、深緋に情報を流した人がいるかもしれないっていう程度」
「……ってなると、怪しいのは誰だ?」
ふーむ、と桜井くんは考え込む。
「せめて新庄と関係ないのは誰かくらい絞りたいよな……」
「そういえば、九十三先輩は大丈夫だってのはなんでだったんだ?」
「なにそれ」