ぼくらは群青を探している
 それはさておき、少なくとも駿くんが私と一緒に行動する限りでは悩む素振(そぶ)りを見せるということは、海に連れて行くだけ連れて行って駿くんをお兄ちゃん達に預けるのは駿くんに悪いような気もする。そうなると家に置いていったほうが駿くんのためな気もするけど、真哉(まさや)お兄さんの口ぶりからして、年中部屋で本だけ読んでる色白の一人っ子を海で遊ばせるべきくらいには思っているのだろう。

 ……群青の先輩達は、駿くんの面倒を見てくれるだろうか。頭には真っ先に九十三(つくみ)先輩が浮かんだ。あの雲雀くんでさえ手懐(てなず)けるのだ、きっと駿くんのことも可愛がってくれるに違いない。唯一問題があるとすれば、駿くんの前で「今日のパンツはー?」なんてルーティンを繰り返すことだけれど、水着だからパンツには言及しないだろう。

 そして昼間であれば、きっと喧嘩沙汰(ざた)は起こらない。仮に何か起こったとしても昼間だし、ひと夏の一日だけやってきているだけだから、駿くんが今後巻き込まれる心配もない。


「……駿くんがいいなら先輩達にも遊んでもらえばいいんじゃないかな」

「部活の先輩か」

「……そんな感じ」


 真面目な真哉(まさや)お兄さんに、まさか不良の先輩とは言えなかった。駿くんはまだ少し悩んでいたけれど「……よく考えれば、いま読むと帰りに読む本がなくなるな」と照れ隠しのような言い訳をして本をリュックに片付けた。


「んじゃ行くかー。チャリは?」

「人数分はないよ」

「んげ、歩きか」


< 312 / 522 >

この作品をシェア

pagetop