ぼくらは群青を探している
指差された方向を見ると、海の上に、お昼に来たときにはなかった道があった。ぱらぱらと、何組かの人が歩いているので、桜井くんがどれなのかは分からない。
「潮の満ち引きで一日二回しか通れねえ、通ったカップルが永遠に結ばれるってやつだろ? 胡散くせえ」蛍さんが苦々し気に「ああいうのは行くヤツほど別れる」
「永人、夢ないなー。そういうこと言ってるから元カノにフラれんだよ」九十三先輩が笑いながら「ああいうのは女の子のロマンなんじゃん。ほら、女の子って占い好きだし。そういうもんだよ」
「俺、占いはマジで嫌いなんですよね」常磐先輩がしかめっ面で反論して「だって普通に都合よすぎじゃないですか?」
「なに、占いになんかイヤな思い出あんの」
「告ったときにAB型は無理って言われたんですよ」
「そんなキチガイに告る常磐が悪いでしょ、てかキチガイ」
「暴言ですよ」
「三国ちゃん、散歩道行きたいの?」
じっと散歩道のことを見ていたせいで勘違いされたらしい。能勢さんがクスッと笑った。
「一緒に行く?」
「……いえ、いいです」
「つか干潮過ぎたろ、やめろ。海のど真ん中に取り残されるラブコメはどっか別ンとこでやってくれ」
じゃあ桜井くん達はもう帰ってくるのだろうか。荷物を片付けながらちらちらと散歩道のほうを見ていたせいか、九十三先輩にまで「三国ちゃんそんな行きたかったの? 明日デートする?」と言われてしまったし、九十三先輩は軽口の罰としてパラソルの片づけをさせられた。
その桜井くん達は十数分もすれば戻ってきて「だからさー、遠いからやめようつったじゃん」「それはごめんって謝ったじゃん」となにやら口喧嘩をしていた。桜井くんはガシガシと金髪を掻き混ぜながら「片付けできなくてすいません」と珍しく律儀に謝った。お陰で蛍さんまで目を丸くした。
「お前……どうした、頭でも打ってきたのか」
「違いますう! 俺だってそのくらいの礼儀ありますう!」
「先輩と擦れ違って『やっほー』なんてふざけた挨拶するヤツが何を」
「挨拶はほら、親しみみたいな。片付けはほら、親しき仲にも礼儀ありみたいな」
「まともなこと言ってるけど大丈夫? あの散歩道ってなにかにとり憑かれるの?」
「だから違いますって! ねー、英凜、俺のティシャツとって」
「え、うん……」
桜井くんのカバンは……、と荷物の中から探そうとすると、先に雲雀くんの手が伸びて、桜井くんのティシャツを放った。桜井くんは「さんきゅー! ……お日様のにおいする!」とそのままティシャツに顔を埋める。可愛いな……と思ったのは私だけではないはずだ。
「侑生、あたしのパーカーも取って」
「ん」
表情を変えずに胡桃の荷物を取ってあげる雲雀くんはやっぱり大人だ。なんなら「てかねー、胡桃マジで反省して」と桜井くんのほうが口を尖らせている。
「あの散歩道、見た目より遠いじゃん。しかもなんもないし」
「なにかあるなんて言ってないじゃん、散歩しよって言っただけなのに」
「しかもカップルばっかで恥ずかしかったし。途中で海に飛び込んでそのまま帰りたかった」
カップルで歩けば永遠に結ばれる道の途中で離脱するなんて謎過ぎる。よっぽどイヤだったんだなと思うとちょっと安心して笑ってしまった。でも胡桃は膨れっ面だ。
「あたしだって彼氏と歩きたかったけど! いまいないんだから仕方ないじゃん!」
「だからって俺じゃなくてよくね」
「潮の満ち引きで一日二回しか通れねえ、通ったカップルが永遠に結ばれるってやつだろ? 胡散くせえ」蛍さんが苦々し気に「ああいうのは行くヤツほど別れる」
「永人、夢ないなー。そういうこと言ってるから元カノにフラれんだよ」九十三先輩が笑いながら「ああいうのは女の子のロマンなんじゃん。ほら、女の子って占い好きだし。そういうもんだよ」
「俺、占いはマジで嫌いなんですよね」常磐先輩がしかめっ面で反論して「だって普通に都合よすぎじゃないですか?」
「なに、占いになんかイヤな思い出あんの」
「告ったときにAB型は無理って言われたんですよ」
「そんなキチガイに告る常磐が悪いでしょ、てかキチガイ」
「暴言ですよ」
「三国ちゃん、散歩道行きたいの?」
じっと散歩道のことを見ていたせいで勘違いされたらしい。能勢さんがクスッと笑った。
「一緒に行く?」
「……いえ、いいです」
「つか干潮過ぎたろ、やめろ。海のど真ん中に取り残されるラブコメはどっか別ンとこでやってくれ」
じゃあ桜井くん達はもう帰ってくるのだろうか。荷物を片付けながらちらちらと散歩道のほうを見ていたせいか、九十三先輩にまで「三国ちゃんそんな行きたかったの? 明日デートする?」と言われてしまったし、九十三先輩は軽口の罰としてパラソルの片づけをさせられた。
その桜井くん達は十数分もすれば戻ってきて「だからさー、遠いからやめようつったじゃん」「それはごめんって謝ったじゃん」となにやら口喧嘩をしていた。桜井くんはガシガシと金髪を掻き混ぜながら「片付けできなくてすいません」と珍しく律儀に謝った。お陰で蛍さんまで目を丸くした。
「お前……どうした、頭でも打ってきたのか」
「違いますう! 俺だってそのくらいの礼儀ありますう!」
「先輩と擦れ違って『やっほー』なんてふざけた挨拶するヤツが何を」
「挨拶はほら、親しみみたいな。片付けはほら、親しき仲にも礼儀ありみたいな」
「まともなこと言ってるけど大丈夫? あの散歩道ってなにかにとり憑かれるの?」
「だから違いますって! ねー、英凜、俺のティシャツとって」
「え、うん……」
桜井くんのカバンは……、と荷物の中から探そうとすると、先に雲雀くんの手が伸びて、桜井くんのティシャツを放った。桜井くんは「さんきゅー! ……お日様のにおいする!」とそのままティシャツに顔を埋める。可愛いな……と思ったのは私だけではないはずだ。
「侑生、あたしのパーカーも取って」
「ん」
表情を変えずに胡桃の荷物を取ってあげる雲雀くんはやっぱり大人だ。なんなら「てかねー、胡桃マジで反省して」と桜井くんのほうが口を尖らせている。
「あの散歩道、見た目より遠いじゃん。しかもなんもないし」
「なにかあるなんて言ってないじゃん、散歩しよって言っただけなのに」
「しかもカップルばっかで恥ずかしかったし。途中で海に飛び込んでそのまま帰りたかった」
カップルで歩けば永遠に結ばれる道の途中で離脱するなんて謎過ぎる。よっぽどイヤだったんだなと思うとちょっと安心して笑ってしまった。でも胡桃は膨れっ面だ。
「あたしだって彼氏と歩きたかったけど! いまいないんだから仕方ないじゃん!」
「だからって俺じゃなくてよくね」