ぼくらは群青を探している
 プツ、ツー、ツー、と電話の向こう側から、機械の音がし始めた。躊躇(ちゅうちょ)ねえ。ぶつ切りとまでは言わないけど、むしろそっと静かに音が切れたからこそ、俺が「じゃね」と言うのを聞き終えてからすぐに耳から受話器を離してそっとおろしたことが分かる。本当に英凜は……そういうところがある。俺も受話器を置いて、ごろりと畳に転がった。


「なんだ、ガールフレンドでもできたのか」


 (ふすま)を開けて入ってきた父さんに「聞いてんじゃねーよ」と畳に転がったまま返事をする。


「わざわざ、電話してメールを聞いたくせに」

「ボーッとしてて、よく危ない目に遭ってんだよ。聞いとかなきゃ俺が困る」

「そんなこと言って――」

「だーから、英凜はそんなんじゃないって」


 めんどくせ。たまに帰ってきたと思ったらこれだ。というか、たまに帰ってこられても何を話せばいいのか分からないし、もしかしたら父さんも同じなのかもしれないし、だから父さんはこの話題を恰好のネタだと思って、引き延ばそうとしているのかもしれない。


「英凜は、ただの友達だよ」


 そうだとして、父さんのそれは、見当違いもいいところだ。ごろりと、畳の上で寝返りを打って、背を向けた。

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