ぼくらは群青を探している
……服部先輩? 頭には勉強会のときに教室の隅っこでつまらなさそうに教科書を捲っていた姿が浮かんだ。同時に、蛍さん達と同級生だけれど、留年して今は常磐先輩と同級生だという情報も浮かぶ。その服部先輩は視聴覚教室に移った後は来ていなかったし、海にもいなかったので、六月以来顔を見ていない。ただ、永人さんも「服部みたいに留年する(ダブる)といけないから」と勉強会を開いていたわけだし……。
「……仲悪いんですか?」
「ああ。永人とトップ取り合ってからますます険悪になった」
服部先輩がトップ……? 頭にはまた服部先輩の姿が浮かんだ。体は蛍さんの二倍くらいあるけど、蛍さんと違って、リーダーとしての風格が全くない。蛍さんがリーダーだからそう思うのかもしれないけれど……。それに、他の先輩達と違って私達にほとんど話しかけてこないのでどんな人なのかも分からない。
「そもそも群青ってどうやってトップ決めんです?」
「先代の指名。永人は石橋先輩――去年のトップに指名されて、芳喜とか俺とか、No.2以下は永人が指名してる」
「へえ……」
「んで、服部は幹部についてないじゃん? まあ永人と仲悪いからなんだよね」
「なんで蛍さんとそんなに仲悪いんですか?」
蛍さん自身はそんなに敵を作りそうなタイプには見えないけれど……と首を傾げると「いやあ、普通に音楽の方向性の違いとかそういうヤツだよ」とよく分からないたとえをされた。
「音楽の……方向性……?」
「群青っていう組織の在り方ってことですか?」
「そうそう」
ああ、なんだそういうことか。そう言ってくれればいいのに。
「それってどういう……」
「庄内とかはビミョー、永人のやり方が気に食わないとこもあるけど、まあ結果を見てたらいまの群青って最強だからよくね、って感じだと思う。ほら、それこそお前らと入学式の日にドンパチやったわけじゃん。あれとか完全に庄内達が勝手にやったこと。そのせいで永人に怒られてたしなー」
ただ九十三先輩はどう方向性が違うのか説明してくれなさそうだった。
「あと、芳喜はまあ特殊だなあ。アイツをNo.2にするってびっくりしたし」
「……なにがどう特殊なんですか?」
「え、だって特別科じゃん。その時点でオカシイ。……まあ他にも理由はあるけど、No.2にしたのって結局永人が芳喜を見張る口実が欲しかったんじゃねーの、って感じがするんだよな」
見張る口実……? ますます能勢さんへの疑念を募らせる私達に「だから芳喜が怪しいつーんなら、それはまあ、そうかもねって感じかな。それでもアイツが三国ちゃん襲うとは思わないけどなあ」とやはり首を捻る。
「能勢さん、なんか怪しいことでもあるんですか」
「永人と服部のトップ争いって、要は派閥争いだったんだよなあ」
九十三先輩は手すりの上に二つ小石を並べた。その小さいほうをトントンを叩いて「永人の派閥と、服部の派閥があってさあ。俺とか常磐は永人派だったんだよね」と小さいほうに小石を増やす。
「で、芳喜は服部側だったんだけど」
……つまり蛍さんは服部先輩の派閥にいる後輩を自分の補佐に指名したということになる。なぜ服部先輩でなく、あえて能勢さんを指名したのか。
「でも服部って、マジ脳筋なんだよね。あの芳喜がその服部につくと思う?」
「お、思えません……」
「……仲悪いんですか?」
「ああ。永人とトップ取り合ってからますます険悪になった」
服部先輩がトップ……? 頭にはまた服部先輩の姿が浮かんだ。体は蛍さんの二倍くらいあるけど、蛍さんと違って、リーダーとしての風格が全くない。蛍さんがリーダーだからそう思うのかもしれないけれど……。それに、他の先輩達と違って私達にほとんど話しかけてこないのでどんな人なのかも分からない。
「そもそも群青ってどうやってトップ決めんです?」
「先代の指名。永人は石橋先輩――去年のトップに指名されて、芳喜とか俺とか、No.2以下は永人が指名してる」
「へえ……」
「んで、服部は幹部についてないじゃん? まあ永人と仲悪いからなんだよね」
「なんで蛍さんとそんなに仲悪いんですか?」
蛍さん自身はそんなに敵を作りそうなタイプには見えないけれど……と首を傾げると「いやあ、普通に音楽の方向性の違いとかそういうヤツだよ」とよく分からないたとえをされた。
「音楽の……方向性……?」
「群青っていう組織の在り方ってことですか?」
「そうそう」
ああ、なんだそういうことか。そう言ってくれればいいのに。
「それってどういう……」
「庄内とかはビミョー、永人のやり方が気に食わないとこもあるけど、まあ結果を見てたらいまの群青って最強だからよくね、って感じだと思う。ほら、それこそお前らと入学式の日にドンパチやったわけじゃん。あれとか完全に庄内達が勝手にやったこと。そのせいで永人に怒られてたしなー」
ただ九十三先輩はどう方向性が違うのか説明してくれなさそうだった。
「あと、芳喜はまあ特殊だなあ。アイツをNo.2にするってびっくりしたし」
「……なにがどう特殊なんですか?」
「え、だって特別科じゃん。その時点でオカシイ。……まあ他にも理由はあるけど、No.2にしたのって結局永人が芳喜を見張る口実が欲しかったんじゃねーの、って感じがするんだよな」
見張る口実……? ますます能勢さんへの疑念を募らせる私達に「だから芳喜が怪しいつーんなら、それはまあ、そうかもねって感じかな。それでもアイツが三国ちゃん襲うとは思わないけどなあ」とやはり首を捻る。
「能勢さん、なんか怪しいことでもあるんですか」
「永人と服部のトップ争いって、要は派閥争いだったんだよなあ」
九十三先輩は手すりの上に二つ小石を並べた。その小さいほうをトントンを叩いて「永人の派閥と、服部の派閥があってさあ。俺とか常磐は永人派だったんだよね」と小さいほうに小石を増やす。
「で、芳喜は服部側だったんだけど」
……つまり蛍さんは服部先輩の派閥にいる後輩を自分の補佐に指名したということになる。なぜ服部先輩でなく、あえて能勢さんを指名したのか。
「でも服部って、マジ脳筋なんだよね。あの芳喜がその服部につくと思う?」
「お、思えません……」