ぼくらは群青を探している
「なんでこいつらと一緒に飯食ってんの? てか代表挨拶してんのに普通科だよな? なんで? お前、ナントカ大学附属高校に行くって噂あったけどあれは? てか髪型変えた? 中学の時って短くなかったっけ? あ、でも長いほうが似合うと思う、グッジョブ」

「……お前うるせーな」


 私の心を雲雀くんが代弁してくれた。まるで立て板に水のごとく疑問を投げかけ続けていた荒神くんは「だってツッコミどころ満載だもん」と。それはまあ、そうかもしれない。


「えーと、んで、え? なに? ……とりあえず俺もドリンクバー頼む」

「騒がしいヤツだな」

「三国、いいか、舜はこういうヤツなんだ」


 桜井くんに言われるまでもなく、荒神くんの分類はわりとできているので問題はない。「なんだよー」と頬を膨らませる様子からも分かるとおり、喜怒哀楽をはっきりと顔に出す。ただ問題は、荒神くんの顔に〝怒〟は出たことがないということだ。そこは意識して誤魔化されているのかもしれない。


「え、つかマジでなんで? まさか拉致(らち)……!」

「人聞きの悪いやつだな」

「えー、んじゃなに、昴夜の彼女?」

「え、そう見える?」


 桜井くんが悪ふざけで肩に手を回す。学ラン越しに、私と大差ない細い腕が肩に乗っかったせいでちょっとだけ緊張したけれど「昴夜が世話になってるから飯に誘った」「あ、そう。お前、昴夜の保護者なの?」完全に無視され、桜井くんはすぐに腕を外した。


「三国かー、いや三国かぁ……。……三国、俺のこと分かる?」

「分かるけど」

「話したことないよな?」

「一回だけ、文化祭準備のときにメモ渡してよろしくって話した」

「……マジか」


 全く覚えていないらしく、荒神くんは眉間にしっかりとしわを寄せ、なんなら顎にもしっかり手を当てる。桜井くんは「舜が女子と喋って覚えてないなんて珍しいな」とコーラを(すす)る。今はもうコーラ・ウーロン茶ではなくただのコーラだ。


「いや……三国のことは、さあ……名前は覚えてるんだよ。顔も。二年のとき同じクラスだったし、そのクラスの女子ランキングで二位だったし……」


 中二のクラスで何かのランキングが行われた記憶はないから、おそらく男子が勝手にやっていたのだろう。桜井くんは「へー、三国人気じゃん」と明るい声だけれど、雲雀くんは表情を変えずに「お前の周りは類友たな」と言うので多分呆れている。


「でも喋ったかなあ……」

「ただの事務連絡だったし、覚えてないことも全然有り得ると思うよ」


 むしろ普通は覚えてないはずだし……と言いかけて飲み込んだ。


「まー、三国、すげー記憶力いいんだもんな」

「あーね。それは有名だった」荒神くんは笑いながら「だって先公が三国に聞くんだもんな、前回なんつったっけ、って」


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