ぼくらは群青を探している
……桜井くん、やっぱり雲雀くんが私のことをどうこう、みたいな話は知らないのかな。知らないなら、やっぱり、私と雲雀くんの関係が変わってしまったら、桜井くんとの関係も変わってしまうのかな。
「てか昼飯買いに行かなきゃ。あー、あと侑生、カバン置いて帰ったの?」
桜井くんは雲雀くんのカバンを拾い上げ、勝手に中身を見る。でも「筆箱しか入ってないや」と、予想通り、一週間学校に置き去りにしていても問題はなさそうだ。
「様子見に行くついでにカバン届けるか。英凜も行くだろ?」
「えっ」
「え?」
せっかく一週間の停学で雲雀くんの顔を見ずに済むのに、わざわざカバンを届けて、しかも私が原因の停学の様子を見にいく……? 無理だ。いくら私でもそんなことをする図太さはない。
「それは……桜井くんだけで、いいんじゃないかな……」
「なんで? アイツ英凜のことは好きなんだから喜ぶって」
……それが問題なんだと口にできればどれだけよかっただろう。というか、そうやって冗談で口にできるということは、桜井くんは知らない……? いや逆に冗談交じりに言うことで雲雀くんにとっての逃げ道を作っているとか……。
分からない。とりあえずぶんぶんと首を横に振った。
「……雲雀くんも、ほら、たまには男同士のほうが色々話せていいかも……しれないし」
「んー? うーん、そうだなあ」
納得したようなしていないような、そんな様子で首を捻りながら「んじゃ昼飯買ってくる」と桜井くんは教室を出て行った。
途端、陽菜が私の肩をガッチリと掴む。
「……え」
「お前雲雀と何かあっただろ」ビクゥッと私の心臓が跳ねたのなんてお見通しかのように陽菜はにんまりと口角を吊り上げたまま声を潜めて「ほらほら、詳しい話教えろよ」
「……ここじゃ……ちょっと……」
「ははーん。こっち来いよ」
昼休みなので、みんな冷房の効いた教室内に閉じこもるばかりで、廊下にたむろする人はいない。結果、内緒話をするには廊下で充分だった。
半ば引きずられるように廊下に出た後、陽菜は「で? で? 告られたの!?」……核心をついてきた。ミンミンミンと窓の外からうるさくセミの声が聞こえるのも気にならないくらい私の心臓の音のほうがうるさい。
「……なんで分かったの……」
「え、だって見てた子から聞いたもん、もうそのまま公開告白しそうな空気だったって。なんて告白された!?」
そんな空気だったのかな……。私には何も分からなかったけどな……。
「……いや……えっと……好きだよって……」
「ぅあー! あたしも雲雀に好きだよって言われたい!」
小声で叫ぶなんて器用な真似をしながら、陽菜は興奮気味に拳でロッカーを叩く。あの告白に、陽菜だったらもっと上手に対応できただろうか。
「え、で、どうなったの、なんて返事したの」
「え……いや……保留……」
「は?」
大きな声を出した陽菜に慌てて手をばたつかせれば、陽菜も慌てて口を手で押さえた。でもすぐに外して「……いや、は?」と繰り返す。
「なんで? 雲雀じゃん? もう喜んでオッケーってか付き合ってもうどうにでもしてほしい」
「……何言ってるかちょっとよく分からないけど」
「雲雀の何がだめなの!?」
「……いや何も駄目じゃないんだけど……」
詰問されると、雲雀くん本人の次くらいに目を合わせられない。しどろもどろと目を逸らしながら「だから……えっと……」と言い訳をする。
「てか昼飯買いに行かなきゃ。あー、あと侑生、カバン置いて帰ったの?」
桜井くんは雲雀くんのカバンを拾い上げ、勝手に中身を見る。でも「筆箱しか入ってないや」と、予想通り、一週間学校に置き去りにしていても問題はなさそうだ。
「様子見に行くついでにカバン届けるか。英凜も行くだろ?」
「えっ」
「え?」
せっかく一週間の停学で雲雀くんの顔を見ずに済むのに、わざわざカバンを届けて、しかも私が原因の停学の様子を見にいく……? 無理だ。いくら私でもそんなことをする図太さはない。
「それは……桜井くんだけで、いいんじゃないかな……」
「なんで? アイツ英凜のことは好きなんだから喜ぶって」
……それが問題なんだと口にできればどれだけよかっただろう。というか、そうやって冗談で口にできるということは、桜井くんは知らない……? いや逆に冗談交じりに言うことで雲雀くんにとっての逃げ道を作っているとか……。
分からない。とりあえずぶんぶんと首を横に振った。
「……雲雀くんも、ほら、たまには男同士のほうが色々話せていいかも……しれないし」
「んー? うーん、そうだなあ」
納得したようなしていないような、そんな様子で首を捻りながら「んじゃ昼飯買ってくる」と桜井くんは教室を出て行った。
途端、陽菜が私の肩をガッチリと掴む。
「……え」
「お前雲雀と何かあっただろ」ビクゥッと私の心臓が跳ねたのなんてお見通しかのように陽菜はにんまりと口角を吊り上げたまま声を潜めて「ほらほら、詳しい話教えろよ」
「……ここじゃ……ちょっと……」
「ははーん。こっち来いよ」
昼休みなので、みんな冷房の効いた教室内に閉じこもるばかりで、廊下にたむろする人はいない。結果、内緒話をするには廊下で充分だった。
半ば引きずられるように廊下に出た後、陽菜は「で? で? 告られたの!?」……核心をついてきた。ミンミンミンと窓の外からうるさくセミの声が聞こえるのも気にならないくらい私の心臓の音のほうがうるさい。
「……なんで分かったの……」
「え、だって見てた子から聞いたもん、もうそのまま公開告白しそうな空気だったって。なんて告白された!?」
そんな空気だったのかな……。私には何も分からなかったけどな……。
「……いや……えっと……好きだよって……」
「ぅあー! あたしも雲雀に好きだよって言われたい!」
小声で叫ぶなんて器用な真似をしながら、陽菜は興奮気味に拳でロッカーを叩く。あの告白に、陽菜だったらもっと上手に対応できただろうか。
「え、で、どうなったの、なんて返事したの」
「え……いや……保留……」
「は?」
大きな声を出した陽菜に慌てて手をばたつかせれば、陽菜も慌てて口を手で押さえた。でもすぐに外して「……いや、は?」と繰り返す。
「なんで? 雲雀じゃん? もう喜んでオッケーってか付き合ってもうどうにでもしてほしい」
「……何言ってるかちょっとよく分からないけど」
「雲雀の何がだめなの!?」
「……いや何も駄目じゃないんだけど……」
詰問されると、雲雀くん本人の次くらいに目を合わせられない。しどろもどろと目を逸らしながら「だから……えっと……」と言い訳をする。