ぼくらは群青を探している
「そんなもんじゃないですか? 成績良い女の子って自分より成績良い男求めますよ。あ、でもそれはプライド高い子だけかなあ。ま、結局俺が一番成績良いからどうでもいいんですけど」

「オイ自慢話ねじ込むんじゃねーよ」

「マジでこれ何回聞いても分かんないんだけど、成績良いとかダサくね? がり勉じゃん? なんでそれがモテんの?」

「成績が良いのとがり勉とは全然別ですよ。俺がり勉じゃないですし」

「だから自慢話はやめろつってんだろ!」

「まー、芳喜はそういうガツガツしてないところがモテるんだろうなあ」

「雲雀くん(しか)りですね」

「ガツガツしてねーのに決めるとこだけ決めやがってさあ。大体、好きなヤツ(かば)って相手殴るとか、そいういうシチュエーションないからね? そういうとこ恵まれてるよな、アイツ、タイミングっていうか」

「実際そうですよね、恋愛はタイミングって言いますから」

「恵まれてるのは顔と頭だけにしとけよな、アイツ」

「てか笹部ってヤツ、学校来てないんだってね。なんで? 雲雀に殴られて心まで折れた?」

「好きな子の前で殴られてあんな状態になってたら、それは心が折れるのでは?」

「俺らが殴り込むまでもなかったね、はは」

「なに笑ってんだよ。別に殴り込むとは言ってねーだろ、三国が泣かされたつーからどんないい男か見に行こうぜってだけじゃねーか」

「あー、顔は悪くないんだけど、なんかなー、男気なさそうなヤツだったんだよな。あれフるのは三国ちゃん男見る目あるよー、正解正解」

「皮肉ですよ、気付いて九十三先輩。どおりでセンター国語が一〇〇点超えないわけですね」

「超えられるわけねーだろあんなの。ねー三国ちゃん、替え玉受験しようよー、俺より三国ちゃんのほうが解けるでしょー」

「三国ちゃん連れてったら雲雀くんの『俺の彼女ですけど』が炸裂(さくれつ)しますよ」

「それを聞いて雲雀を殴るまでがセットだからセーフ」

「で、雲雀くんが三国ちゃんに介抱(かいほう)されるの見るのまでもれなくセット、と。ああ、ごめんね三国ちゃん、真っ赤だね」

「……これは練習を真面目にやって暑いせいです」


 嘘だった。間違いなく先輩達の下世話な話のせいで顔から火が出そうだった。というか多分もう出ている。赤面している有様をゆでだこ状態などと例えた人は上手いことを言った。

 それにしても……、最後に颯爽(さっそう)と締めくくった能勢さんはもちろん、蛍さんも九十三先輩も、散々私と雲雀くんのことをネタにして楽しくて楽しくて仕方がなさそうだ。本当になんなのだろう、この人達。


「……てか英凜と侑生付き合ってないじゃん?」


 周知の事実だ。先輩達もそれは分かって言っている。分かった上で、そんな話をしているのだ。そして先輩達は、それで桜井くんが一人余ることに対して余計に嬉しそうな顔をする。


「まあまあ、桜井くん、受け入れなよ。所詮男女の三人組なんてそうなる運命だから。一人余るから」

「だから付き合ってないじゃん!?」

「お前はなあ、顔は悪くないと思うんだ、三国を泣かせた笹部より断然いいぜ、先輩が保障する。でもお前、中身がガキなんだよなあ」

「なんで俺も英凜にフラれたみたいになってんの!?」

「まあ桜井、男は身長じゃねーから」

「俺は成長期ですう! 永人さんと違ってまだ伸びまイテッ」


 桜井くんの頭はまるで(むち)のようにしなやかなハチマキに叩かれた。


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