ぼくらは群青を探している
「てか三国ちゃん、あれで雲雀にぐっとこなかった? カッコイーしびれるーってなんなかった?」
……また会話が元に戻った。しかも「なんか盛り上がってんなと思ったから止めないでおいたんだよね、俺グッジョブ」……できるものなら止めてほしかったと本気で思った。そうでなければこんなことにはならなかったのに。
「……そもそも、先輩達が認識してる話は事実と全然違う気がするんですけど」
「笹部に泣かされたんだろ?」
「泣かされてません」
「んじゃあれは、雲雀が公開告白した」
「されてません」
告白された点だけは本当だったのでつい返事が力んでしまった。でも蛍さんは「そんなマジになんなよ、さすがにそれはやってねーだろと思ってたよ」と笑い飛ばしただけだった。
「あとなんか噂あったっけ?」
「俺と芳喜が笹部殴ったみたいに言われてるけど、あれは嘘、俺達は何もしてない」
「俺の噂は流れてませんよ。噂で言われてるのは九十三先輩だけです」
「お前! 特別科だからって!」
「俺があと聞いたのは……笹部くんが三国ちゃんの着替え写真を撮ってたってこととか」
……多分「写真が事件の発端になった」→「よっぽど恥ずかしい写真に違いない」→「着替え写真」になったのだろう。本当に噂というのは当てにならない。
「盗撮はゲスのやることだな。笹部殴りに行くか」
「だから笹部くんは休みですって」
「それ以前に盗撮されてません!」
そもそも写真を撮ったのが笹部くんだと決まったわけでもない。
「あとは……笹部くんが童貞とか」
「それは知らねーよ」
「あーでもぽい顔してる」
「え、私は思ったことないんですけど……しかも高村光太郎って結構ダンディな感じの……」
「三国ちゃん、それは『道程』。ドウテイ違いだからね。雲雀くんにちゃーんと色々教えてもらおうね」
「つか雲雀が三国ちゃんに教え込むの? ヤバくね?」
「……言われてみれば確かに。三国ちゃんはドウテイって聞いて高村光太郎を思い浮かべるくらいのままでいてほしいですよね」
「ラブホの意味も知らねーしな」
「群青で不純異性交遊禁止条例作ろうぜ。つか別れさせようぜ」
「だから付き合ってません!」
「てか雲雀停学なの最高だな! アイツの前でこんな話したらゼッテー凄い顔で睨んでくるからな! 停学の間マジでいじり放題、最高」
「それはすんげぇ分かる」
ゲラゲラと声を上げて笑う、その姿には血も涙もない。いや、もしかしたら先輩達にとっては「停学? 合法的な休みだよね!」くらいの感覚なのかもしれない。
「つか雲雀と三国ちゃんが付き合うより、雲雀が三国ちゃんにフラれてるほうが面白いよなー。雲雀が停学明けるまでに三国ちゃんにフラれた噂流しとこうぜ」
「雲雀くん、ああ見えて繊細そうじゃないですか。そんな噂流れてたら不登校になりますよ」
「いやアイツそんな可愛くねーから。不登校になったら三国ちゃんが気にするカモとか考えて平気なフリして友達面して、笹部みたいなのが出てきたら今までどおり殴って『付き合いたいって下心があってやったことじゃないから』みたいな態度とる。んで陰で引きずる」
九十三先輩のその分析はドスドスと私の胸に突き刺さった。針なんて生易しいものでなく釘を金槌で打ち込まれた気分だった、心が痛い。しかも微妙に的確で、的を射ている気がする。本当に心が痛い。
「可愛くねーとかじゃなくてそれただ男前だろ。アイツそこまで人間できてんのかよ」
……また会話が元に戻った。しかも「なんか盛り上がってんなと思ったから止めないでおいたんだよね、俺グッジョブ」……できるものなら止めてほしかったと本気で思った。そうでなければこんなことにはならなかったのに。
「……そもそも、先輩達が認識してる話は事実と全然違う気がするんですけど」
「笹部に泣かされたんだろ?」
「泣かされてません」
「んじゃあれは、雲雀が公開告白した」
「されてません」
告白された点だけは本当だったのでつい返事が力んでしまった。でも蛍さんは「そんなマジになんなよ、さすがにそれはやってねーだろと思ってたよ」と笑い飛ばしただけだった。
「あとなんか噂あったっけ?」
「俺と芳喜が笹部殴ったみたいに言われてるけど、あれは嘘、俺達は何もしてない」
「俺の噂は流れてませんよ。噂で言われてるのは九十三先輩だけです」
「お前! 特別科だからって!」
「俺があと聞いたのは……笹部くんが三国ちゃんの着替え写真を撮ってたってこととか」
……多分「写真が事件の発端になった」→「よっぽど恥ずかしい写真に違いない」→「着替え写真」になったのだろう。本当に噂というのは当てにならない。
「盗撮はゲスのやることだな。笹部殴りに行くか」
「だから笹部くんは休みですって」
「それ以前に盗撮されてません!」
そもそも写真を撮ったのが笹部くんだと決まったわけでもない。
「あとは……笹部くんが童貞とか」
「それは知らねーよ」
「あーでもぽい顔してる」
「え、私は思ったことないんですけど……しかも高村光太郎って結構ダンディな感じの……」
「三国ちゃん、それは『道程』。ドウテイ違いだからね。雲雀くんにちゃーんと色々教えてもらおうね」
「つか雲雀が三国ちゃんに教え込むの? ヤバくね?」
「……言われてみれば確かに。三国ちゃんはドウテイって聞いて高村光太郎を思い浮かべるくらいのままでいてほしいですよね」
「ラブホの意味も知らねーしな」
「群青で不純異性交遊禁止条例作ろうぜ。つか別れさせようぜ」
「だから付き合ってません!」
「てか雲雀停学なの最高だな! アイツの前でこんな話したらゼッテー凄い顔で睨んでくるからな! 停学の間マジでいじり放題、最高」
「それはすんげぇ分かる」
ゲラゲラと声を上げて笑う、その姿には血も涙もない。いや、もしかしたら先輩達にとっては「停学? 合法的な休みだよね!」くらいの感覚なのかもしれない。
「つか雲雀と三国ちゃんが付き合うより、雲雀が三国ちゃんにフラれてるほうが面白いよなー。雲雀が停学明けるまでに三国ちゃんにフラれた噂流しとこうぜ」
「雲雀くん、ああ見えて繊細そうじゃないですか。そんな噂流れてたら不登校になりますよ」
「いやアイツそんな可愛くねーから。不登校になったら三国ちゃんが気にするカモとか考えて平気なフリして友達面して、笹部みたいなのが出てきたら今までどおり殴って『付き合いたいって下心があってやったことじゃないから』みたいな態度とる。んで陰で引きずる」
九十三先輩のその分析はドスドスと私の胸に突き刺さった。針なんて生易しいものでなく釘を金槌で打ち込まれた気分だった、心が痛い。しかも微妙に的確で、的を射ている気がする。本当に心が痛い。
「可愛くねーとかじゃなくてそれただ男前だろ。アイツそこまで人間できてんのかよ」