ぼくらは群青を探している
口先では嫌がりつつ、私の代わりに犠牲になるつもりはあってくれるのか、能勢さんは私のリアクションを確認しながら勝手に続きを口にしてくれた。でもその続く内容がクズすぎて感謝そっちのけで唖然としてしまった。というか、能勢さんが投下した爆弾を能勢さんが責任を持って撤去しただけなのでマッチポンプのようなものだ。騙されかけてしまった。
「今度は何して泣かせた? いや何したかは分かってんだよな、なんで泣くヤツと泣かないヤツがいんの?」
「そこは完全に個人の問題なんですよ。俺はちゃんと最初に話してるんですよ、あくまで俺達の関係は何でもないからって。でも理解しない子がいるんですよね」
「三国、お前は聞かなくていい。肉食え」
頭の上に疑問符を浮かべていると一番席の遠い蛍さんからお皿にお肉を入れられた。そのくらい聞かないほうがいい話らしい。
「理解しない子がいるんですよねったって、お前が悪いだろ」
「悪くないですよ。俺は最初から説明してるし、それでいいって相手も言ってるわけで。後になって喚かれて話が違うと言いたいのはこっち」
「ねー、三国ちゃんどう思う? こういうのどう思う?」
「な……なにが……?」
「聞かなくていいつってんだろ三国、お前は黙って肉食ってろ」
「だからさあ、お互い遊びって割り切ろうねつったってこの顔だったら大体本気になるわけじゃん? そんで飽きたらポイして一回や二回ヤッたくらいで彼女面すんなって言って泣かせてるわけよ」
「……?」
「聞かせんなつってんだろ」
「イッテ! 聞かせんなとは言ってねーだろ!」
「オイ雲雀」
九十三先輩をトングの柄で殴った後、蛍さんはカチカチとそのままトングを鳴らす。
「三国のこの有様、俺らは知ってんだからな。三国が何かを覚えたそれすなわちお前が教え込んだものであることは明らかだ。その場合『群青の健全なる異性交遊に関する三箇条』を破ったものとしてお前の小指を切って焼く」
「……絶対九十三先輩とか能勢さんが吹き込んで俺を嵌めるやつじゃないですか」
「九十三か芳喜が教え込んだと証明できた場合はお前を許す」
「できるわけないでしょそんなこと。てか三箇条じゃなくなってますよね」
「んじゃ十箇条にしてやるからテメェの部屋の扉にでも貼っときな」
「また増えたしそんな修行僧じゃないんだから……」
ぼやく雲雀くんに「手を出すって宣言かそれは?」蛍さんはギラリと目を光らせ「そんなことは言ってません」雲雀くんはまたぼやく。私はそっと桜井くんの様子を窺う。でも桜井くんはなんでもないように、ともすればどこか無関心そうに、終始お肉を食べているだけだった。
かくして予想どおり、いや予想以上に、先輩達は打ち上げの二時間を通じて雲雀くんイジメに躍起になっていた。能勢さんが「大丈夫、非モテのただの僻みだから」と微笑んでいたけれど、なにがどう大丈夫なのか分からなかった。なお、まるで (というか実際)非モテなんてワードに縁がないかのような発言だったせいでその後頭部には伝票を入れるためのプラスチックの筒が飛来していた。
その晒上げ地獄のような打ち上げが終わった後、次の日に待っていたのは更なる晒上げ地獄だった。
「おい雲雀はいるか」
昼休み、いつしかのように教室の扉を叩き破る勢いで蛍さん御一行がやってきた。問題の雲雀くんは桜井くんと花札をしている。
「……なんすか」
「今度は何して泣かせた? いや何したかは分かってんだよな、なんで泣くヤツと泣かないヤツがいんの?」
「そこは完全に個人の問題なんですよ。俺はちゃんと最初に話してるんですよ、あくまで俺達の関係は何でもないからって。でも理解しない子がいるんですよね」
「三国、お前は聞かなくていい。肉食え」
頭の上に疑問符を浮かべていると一番席の遠い蛍さんからお皿にお肉を入れられた。そのくらい聞かないほうがいい話らしい。
「理解しない子がいるんですよねったって、お前が悪いだろ」
「悪くないですよ。俺は最初から説明してるし、それでいいって相手も言ってるわけで。後になって喚かれて話が違うと言いたいのはこっち」
「ねー、三国ちゃんどう思う? こういうのどう思う?」
「な……なにが……?」
「聞かなくていいつってんだろ三国、お前は黙って肉食ってろ」
「だからさあ、お互い遊びって割り切ろうねつったってこの顔だったら大体本気になるわけじゃん? そんで飽きたらポイして一回や二回ヤッたくらいで彼女面すんなって言って泣かせてるわけよ」
「……?」
「聞かせんなつってんだろ」
「イッテ! 聞かせんなとは言ってねーだろ!」
「オイ雲雀」
九十三先輩をトングの柄で殴った後、蛍さんはカチカチとそのままトングを鳴らす。
「三国のこの有様、俺らは知ってんだからな。三国が何かを覚えたそれすなわちお前が教え込んだものであることは明らかだ。その場合『群青の健全なる異性交遊に関する三箇条』を破ったものとしてお前の小指を切って焼く」
「……絶対九十三先輩とか能勢さんが吹き込んで俺を嵌めるやつじゃないですか」
「九十三か芳喜が教え込んだと証明できた場合はお前を許す」
「できるわけないでしょそんなこと。てか三箇条じゃなくなってますよね」
「んじゃ十箇条にしてやるからテメェの部屋の扉にでも貼っときな」
「また増えたしそんな修行僧じゃないんだから……」
ぼやく雲雀くんに「手を出すって宣言かそれは?」蛍さんはギラリと目を光らせ「そんなことは言ってません」雲雀くんはまたぼやく。私はそっと桜井くんの様子を窺う。でも桜井くんはなんでもないように、ともすればどこか無関心そうに、終始お肉を食べているだけだった。
かくして予想どおり、いや予想以上に、先輩達は打ち上げの二時間を通じて雲雀くんイジメに躍起になっていた。能勢さんが「大丈夫、非モテのただの僻みだから」と微笑んでいたけれど、なにがどう大丈夫なのか分からなかった。なお、まるで (というか実際)非モテなんてワードに縁がないかのような発言だったせいでその後頭部には伝票を入れるためのプラスチックの筒が飛来していた。
その晒上げ地獄のような打ち上げが終わった後、次の日に待っていたのは更なる晒上げ地獄だった。
「おい雲雀はいるか」
昼休み、いつしかのように教室の扉を叩き破る勢いで蛍さん御一行がやってきた。問題の雲雀くんは桜井くんと花札をしている。
「……なんすか」