ぼくらは群青を探している
集会をすると言った人が一体何を……。しかもそんないろんな色の頭の先輩達が集まってきて「受験生様」と名乗ったところで説得力の欠片もない。
「……そうだとして、日曜日にわざわざ集会なんて珍しいですね」
「俺は今日でもいいって話したんだけどさー」と九十三先輩がいえば「土日にセンター模試あっから俺は勉強すんだよ!」と蛍さんが苛立たし気に答えた。この人、不良なんてやめればいいのに……。
「てか集会って何? 何かあったの?」
「その話をするから集会すんだろ。雲雀、お前に関係ある話だからな」
雲雀くんは眉間に深い皺を作ったまま、丁寧に指をティッシュで拭いている。さすがにここまで全力でいじられるとちょっと不機嫌そうだ。
「返事は?」
「……分かりましたよ」
「よろしい。んじゃ日曜な」
絶対あの血判状のためだけに来たんだ……。先輩達は「これで三国ちゃんも安心だなー」なんて余計なお世話を口にしながら帰って行った。雲雀くんの眉間の皺は依然深い。
その先輩達が去ったことで危難も去ったと考えたのだろう、陽菜が先輩達の出て行った扉を見守りながら私の席の隣に戻ってきて「……相変わらず群青の先輩すげーな」と呟いた。
「……もう昨日からずっとあの調子だよ」
「マジか、ウケる。でもめっちゃ気持ち分かる、あたしだって昨日聞いてなかったら今日叫んでたと思う」
というか、現に、陽菜は聞いた瞬間に叫んでいた。昨日、焼肉に行く前に雲雀くんは桜井くん、私は陽菜に報告をし、桜井くんがどうだったかは知らないけれど陽菜はカフェで人目もはばからず「マジ!!」と叫んだ。その後のボリュームはさすがに平常に戻ったものの「なんて言ったの」「そんで雲雀はなんて答えたの」「え、その時の雲雀ってやっぱいつもどおりクールなの?」「あたしも照れてる雲雀見たいぃー」とすごい喚きようだった。逐一陽菜に感想を言われるたびに土曜日のことを反芻してしまって恥ずかしくて仕方がなかった。
ただ、そんなことは今はどうでもいい。問題は、さすがにこの流れでクラスのみんなが状況を把握しないわけがないことだ。私と雲雀くんに直接声をかける勇気がある人はいないらしく「陽菜、ちょっと……」と陽菜が連れ去られ「……三国さんと雲雀くんのってただの噂なんじゃないの?」「え、英凜ー、話していいよな?」……もう話すしか選択肢のない確認がなされた。雲雀くんに目配せしたけど「……時すでに遅しだろ」私と全く同じ感想だった。
「……いい……ですよ……」
「土曜から付き合ってんだって」
……陽菜の声が教室に響き渡った瞬間の〝音〟をなんと表そう。まさしくどよめいたと表現するのが適切な、声の爆音が弾けた。
「え、でも噂否定してなかったっけ?」
「雲雀、公開告白はしてないんだって。こっそり告白」
メキリ……と雲雀くんのほうから不穏な音が聞こえた。反射的に顔を向けると、その手の中でシャーペンが曲がっていた。確かに「こっそり告白」なんて字面は雲雀くんには似合わない。イメージ破壊もいいところだ。
「そう……なんだ……?」
「英凜も詳しいこと教えてくんなかったからさ、あとは二人に聞いて」
そう言えばみんなはこれ以上深堀できないと陽菜は本能的に分かっている。だからその返答は完璧だった。
が、噂が広まる広まらないというのは、また別の話だ。笹部くんの一件で分かっていたことだったけれど、私と雲雀くんの噂は伝染病も真っ青な勢いで学年中に広まった。
「……そうだとして、日曜日にわざわざ集会なんて珍しいですね」
「俺は今日でもいいって話したんだけどさー」と九十三先輩がいえば「土日にセンター模試あっから俺は勉強すんだよ!」と蛍さんが苛立たし気に答えた。この人、不良なんてやめればいいのに……。
「てか集会って何? 何かあったの?」
「その話をするから集会すんだろ。雲雀、お前に関係ある話だからな」
雲雀くんは眉間に深い皺を作ったまま、丁寧に指をティッシュで拭いている。さすがにここまで全力でいじられるとちょっと不機嫌そうだ。
「返事は?」
「……分かりましたよ」
「よろしい。んじゃ日曜な」
絶対あの血判状のためだけに来たんだ……。先輩達は「これで三国ちゃんも安心だなー」なんて余計なお世話を口にしながら帰って行った。雲雀くんの眉間の皺は依然深い。
その先輩達が去ったことで危難も去ったと考えたのだろう、陽菜が先輩達の出て行った扉を見守りながら私の席の隣に戻ってきて「……相変わらず群青の先輩すげーな」と呟いた。
「……もう昨日からずっとあの調子だよ」
「マジか、ウケる。でもめっちゃ気持ち分かる、あたしだって昨日聞いてなかったら今日叫んでたと思う」
というか、現に、陽菜は聞いた瞬間に叫んでいた。昨日、焼肉に行く前に雲雀くんは桜井くん、私は陽菜に報告をし、桜井くんがどうだったかは知らないけれど陽菜はカフェで人目もはばからず「マジ!!」と叫んだ。その後のボリュームはさすがに平常に戻ったものの「なんて言ったの」「そんで雲雀はなんて答えたの」「え、その時の雲雀ってやっぱいつもどおりクールなの?」「あたしも照れてる雲雀見たいぃー」とすごい喚きようだった。逐一陽菜に感想を言われるたびに土曜日のことを反芻してしまって恥ずかしくて仕方がなかった。
ただ、そんなことは今はどうでもいい。問題は、さすがにこの流れでクラスのみんなが状況を把握しないわけがないことだ。私と雲雀くんに直接声をかける勇気がある人はいないらしく「陽菜、ちょっと……」と陽菜が連れ去られ「……三国さんと雲雀くんのってただの噂なんじゃないの?」「え、英凜ー、話していいよな?」……もう話すしか選択肢のない確認がなされた。雲雀くんに目配せしたけど「……時すでに遅しだろ」私と全く同じ感想だった。
「……いい……ですよ……」
「土曜から付き合ってんだって」
……陽菜の声が教室に響き渡った瞬間の〝音〟をなんと表そう。まさしくどよめいたと表現するのが適切な、声の爆音が弾けた。
「え、でも噂否定してなかったっけ?」
「雲雀、公開告白はしてないんだって。こっそり告白」
メキリ……と雲雀くんのほうから不穏な音が聞こえた。反射的に顔を向けると、その手の中でシャーペンが曲がっていた。確かに「こっそり告白」なんて字面は雲雀くんには似合わない。イメージ破壊もいいところだ。
「そう……なんだ……?」
「英凜も詳しいこと教えてくんなかったからさ、あとは二人に聞いて」
そう言えばみんなはこれ以上深堀できないと陽菜は本能的に分かっている。だからその返答は完璧だった。
が、噂が広まる広まらないというのは、また別の話だ。笹部くんの一件で分かっていたことだったけれど、私と雲雀くんの噂は伝染病も真っ青な勢いで学年中に広まった。