ぼくらは群青を探している
それが分かったのは次の日。学校に着いた瞬間に「雲雀くんと付き合ってるんだって」「結局?」「狙ってたのに……」と聞こえよがしに言われたので、もう特別科の皆々様の知るところなのだと分からされた。
ただでさえ笹部くんのせいで噂が広がりすぎてたしな……と諦めながら教室へ行けば、「ゆーうきぃー! おっめでとー!」荒神くんが歌うようなテンションとボリュームで教室に入ってきて、既に着席していた雲雀くんの肩をバンバン叩いた。多分、私が登校してくるのを見計らって教室にやって来たのだろう。
「水臭いなー、お前やっぱり三国のこと好きだったんじゃん、早く言ってくれよー。そしたらもっと気利かせて二人きりにしたのにさあー」
「んじゃ出て行けよ今すぐに」
「冷たっ。それが友達に言うことかよ、なあ三国ぃ」
こればかりは私も雲雀くんと同意見だった。荒神くんの緩んだ笑みは正直……ちょっとだけ腹立たしかった。
「な、三国は侑生のどんなところが好きなイテテテ外れる! それ腕外れるから!」
「出て行け。今すぐに」
雲雀くんが荒神くんの背中を蹴りそのまま足で肩を押さえつけ腕を捩じ上げる、その僅か五秒で片がついた。
その荒神くんが出て行ったかと思えば、今度は窓がバーンッと開いて「侑生さん英凜さんおめでとうございます!」と中津くんがやってきた。
「分かってましたけどね? 分かってましたけどね、俺を助けてくれたときの二人のコンビネーションから! 分かってましたけどそれでも本当に付き合うってなるとなんかすげー自分のことのように嬉しいです! おめでとうございます! 群青の最強の頭脳がくっついたらもう怖いもんなしですね! ゆくゆくは侑生さんと英凜さんが群青を背負──」
ガラガラ、ピシャッ、ガチャンと雲雀くんが窓と鍵を閉めた。シルエットだけ残った中津くんが「え! ちょっと! まだお祝いの途中なんですけど!」と窓を叩くのに対し「うるせえ」雲雀くんが低い声と強い拳で一度窓を叩いた。中津くんが静かになってすごすごと六組へ戻って行ったのがシルエットで分かった。
そんな朝の騒動が終わった後、昼休みには「英凜ーっ!」と案の定胡桃が満面の笑みで飛び込んできて、勢いよく私の手を両手で握った。
「もう……噂聞いたときはまたただの噂かと思ったんだけどおめでとう! 今度は本当に侑生と付き合ったんだってね!」
「あ……うん……そうだね……」
「侑生もおめでとう! もーね、ぜーったい侑生は英凜のこと好きなんだって思ってた! 分かってた!」
雲雀くんの地雷を無理矢理掘り起こして公衆の面前に晒上げて踏み抜くがごとくのセリフに、ぶわっと全身から脂汗が噴き出た。この胡桃に対して雲雀くんがどう反応するか、気が気じゃない。現に雲雀くんの眉間の皺はかつてないほどに深い。
「……お前昼飯食いに行けば?」
でも雲雀くんは理性的だった。本当に、海の一件が嘘じゃないかと思えるほどだ。もしかしたら雲雀くんは胡桃耐性が強いのかもしれない。
「そんな照れないでもいいじゃん、もう付き合ったんだし。え、っていうか噂だと侑生が告白したんでしょ? なんて言ったの?」
「それお前に関係あんの?」
……胡桃耐性は、ないのかもしれない。
ただでさえ笹部くんのせいで噂が広がりすぎてたしな……と諦めながら教室へ行けば、「ゆーうきぃー! おっめでとー!」荒神くんが歌うようなテンションとボリュームで教室に入ってきて、既に着席していた雲雀くんの肩をバンバン叩いた。多分、私が登校してくるのを見計らって教室にやって来たのだろう。
「水臭いなー、お前やっぱり三国のこと好きだったんじゃん、早く言ってくれよー。そしたらもっと気利かせて二人きりにしたのにさあー」
「んじゃ出て行けよ今すぐに」
「冷たっ。それが友達に言うことかよ、なあ三国ぃ」
こればかりは私も雲雀くんと同意見だった。荒神くんの緩んだ笑みは正直……ちょっとだけ腹立たしかった。
「な、三国は侑生のどんなところが好きなイテテテ外れる! それ腕外れるから!」
「出て行け。今すぐに」
雲雀くんが荒神くんの背中を蹴りそのまま足で肩を押さえつけ腕を捩じ上げる、その僅か五秒で片がついた。
その荒神くんが出て行ったかと思えば、今度は窓がバーンッと開いて「侑生さん英凜さんおめでとうございます!」と中津くんがやってきた。
「分かってましたけどね? 分かってましたけどね、俺を助けてくれたときの二人のコンビネーションから! 分かってましたけどそれでも本当に付き合うってなるとなんかすげー自分のことのように嬉しいです! おめでとうございます! 群青の最強の頭脳がくっついたらもう怖いもんなしですね! ゆくゆくは侑生さんと英凜さんが群青を背負──」
ガラガラ、ピシャッ、ガチャンと雲雀くんが窓と鍵を閉めた。シルエットだけ残った中津くんが「え! ちょっと! まだお祝いの途中なんですけど!」と窓を叩くのに対し「うるせえ」雲雀くんが低い声と強い拳で一度窓を叩いた。中津くんが静かになってすごすごと六組へ戻って行ったのがシルエットで分かった。
そんな朝の騒動が終わった後、昼休みには「英凜ーっ!」と案の定胡桃が満面の笑みで飛び込んできて、勢いよく私の手を両手で握った。
「もう……噂聞いたときはまたただの噂かと思ったんだけどおめでとう! 今度は本当に侑生と付き合ったんだってね!」
「あ……うん……そうだね……」
「侑生もおめでとう! もーね、ぜーったい侑生は英凜のこと好きなんだって思ってた! 分かってた!」
雲雀くんの地雷を無理矢理掘り起こして公衆の面前に晒上げて踏み抜くがごとくのセリフに、ぶわっと全身から脂汗が噴き出た。この胡桃に対して雲雀くんがどう反応するか、気が気じゃない。現に雲雀くんの眉間の皺はかつてないほどに深い。
「……お前昼飯食いに行けば?」
でも雲雀くんは理性的だった。本当に、海の一件が嘘じゃないかと思えるほどだ。もしかしたら雲雀くんは胡桃耐性が強いのかもしれない。
「そんな照れないでもいいじゃん、もう付き合ったんだし。え、っていうか噂だと侑生が告白したんでしょ? なんて言ったの?」
「それお前に関係あんの?」
……胡桃耐性は、ないのかもしれない。