ぼくらは群青を探している
「喋ってるのを見て、聞いてて、ああ、馬鹿だなあと思う。学校の成績なんていう、ガリ勉すればついてくるだけの成果に縋りついて、哀れだなあとさえ思う。そういう相手に付き合いたいなんて言われたって、いやいや、冗談はよしてくれって感じだよ。三国ちゃんはそんなことない? 笹部くんは、まあ、容姿だけでいえばそれなりにいい部類だと思うけど、彼の中身が凄絶なまでに馬鹿だ、そう思わなかった?」
あまりにも突飛で、あまりにも乱暴で、あまりにも傲慢な指摘だった。それが能勢さんの本心なのかどうなのかは別として、そんな見方を私に話してくれる理由が分からず、呆然と目をぱちくりさせてしまった。
「相手に何を求めるかなんて人によって違うだろうけど、きっと三国ちゃんは俺と同じ部類じゃない? 話が通じない相手に、三国ちゃんはどこまで敷衍してあげる? 通じてるフリして話を終えるでしょ?」
苛立ちから自暴自棄になってしまったような、そんな喋り方だった。そうでなければ、能勢さんが私にこんなことを話すはずがなかった。
そうだとすれば、その原因は能勢さんがここに来るまでに済ませた用事にあるのだろうけれど、その用事の内容なんて知る由もない。
「話の通じない相手と付き合う意味なんてないでしょ? だから、三国ちゃんの周りで雲雀くんはベストな男だと思うよ。俺が知ってる中で、雲雀くんは一番頭が良いからね」
能勢さんは、そうやって頭の良さに順位をつけているのだろうか。
「……蛍さんは?」
「普通。良いと思ったことはないけど、悪いと思ったこともないよ。群青をまとめるくらいの良さはあるよね、それは適性とかそういう話なのかもしれないけど」
「……九十三先輩は?」
「うん、あの人は意外と頭が良いんだよね。あれくらい頭悪いフリしたほうが生きやすいって分かってる、そういう器用さがダントツだよね」
「……常盤先輩は?」
「渚はまあ普通。良いと思ったことはないけど、やっぱり悪いと思ったこともないかな」
「……滝山先輩は?」
「アサヒは頭が悪いんだよなあ。でも俺は好きだよ、すごく人間らしくって」
「……桜井くんは?」
順繰りに尋ねたことに意味はなかった。ないつもりだった。
ただ、能勢さんは、私を見下ろして、どこか意地の悪そうな笑みを浮かべた。意地悪ではなく、意地の悪そうな。
「それを聞いてどうするの?」
私は、桜井くんの名前を出して、能勢さんにどんな回答を求めていたのだろう。
「三国ちゃんのことを好きなのは、雲雀くんでしょ?」
そして能勢さんは、私も知らない私を見透かしたのだろうか。
「英凜と能勢さん、早くねー?」
その続きを聞く前に、件の雲雀くんと桜井くんがやってくるのが見えてしまったので、私は黙るしかなかった。能勢さんも会話を切り上げて「そういう二人も、まだ三年は来てないよ」と声を張り上げる。
「逆に三年はまだなんですか」
「模試の答え合わせさせられてるんじゃない?」
「うえー、やだなー、俺らも三年になったらそんなことさせられるのかな」
「早いな、三国」
「……模試が終わる時間に合わせて来たんだけどね」
あまりにも突飛で、あまりにも乱暴で、あまりにも傲慢な指摘だった。それが能勢さんの本心なのかどうなのかは別として、そんな見方を私に話してくれる理由が分からず、呆然と目をぱちくりさせてしまった。
「相手に何を求めるかなんて人によって違うだろうけど、きっと三国ちゃんは俺と同じ部類じゃない? 話が通じない相手に、三国ちゃんはどこまで敷衍してあげる? 通じてるフリして話を終えるでしょ?」
苛立ちから自暴自棄になってしまったような、そんな喋り方だった。そうでなければ、能勢さんが私にこんなことを話すはずがなかった。
そうだとすれば、その原因は能勢さんがここに来るまでに済ませた用事にあるのだろうけれど、その用事の内容なんて知る由もない。
「話の通じない相手と付き合う意味なんてないでしょ? だから、三国ちゃんの周りで雲雀くんはベストな男だと思うよ。俺が知ってる中で、雲雀くんは一番頭が良いからね」
能勢さんは、そうやって頭の良さに順位をつけているのだろうか。
「……蛍さんは?」
「普通。良いと思ったことはないけど、悪いと思ったこともないよ。群青をまとめるくらいの良さはあるよね、それは適性とかそういう話なのかもしれないけど」
「……九十三先輩は?」
「うん、あの人は意外と頭が良いんだよね。あれくらい頭悪いフリしたほうが生きやすいって分かってる、そういう器用さがダントツだよね」
「……常盤先輩は?」
「渚はまあ普通。良いと思ったことはないけど、やっぱり悪いと思ったこともないかな」
「……滝山先輩は?」
「アサヒは頭が悪いんだよなあ。でも俺は好きだよ、すごく人間らしくって」
「……桜井くんは?」
順繰りに尋ねたことに意味はなかった。ないつもりだった。
ただ、能勢さんは、私を見下ろして、どこか意地の悪そうな笑みを浮かべた。意地悪ではなく、意地の悪そうな。
「それを聞いてどうするの?」
私は、桜井くんの名前を出して、能勢さんにどんな回答を求めていたのだろう。
「三国ちゃんのことを好きなのは、雲雀くんでしょ?」
そして能勢さんは、私も知らない私を見透かしたのだろうか。
「英凜と能勢さん、早くねー?」
その続きを聞く前に、件の雲雀くんと桜井くんがやってくるのが見えてしまったので、私は黙るしかなかった。能勢さんも会話を切り上げて「そういう二人も、まだ三年は来てないよ」と声を張り上げる。
「逆に三年はまだなんですか」
「模試の答え合わせさせられてるんじゃない?」
「うえー、やだなー、俺らも三年になったらそんなことさせられるのかな」
「早いな、三国」
「……模試が終わる時間に合わせて来たんだけどね」