ぼくらは群青を探している
「だよなー、女と揉めたんならざまーみろだけどな」
本当に機嫌悪かったんだ……。お水を飲みながらつい桜井くん達が来る前の能勢さんの様子を脳内で反芻した。その言動には普段の能勢さんからは考えられもしない横暴さを感じた気がしていたけれど、あれはやっぱり勘違いじゃなかった……。
「俺、全然分かりませんでしたけど。何がどう悪かったんですか?」
「アイツ、俺がいるときは煙草吸わねーんだよ」
……そういえば、蛍さんの前では後輩然としているんだと能勢さん自身が言っていた。雲雀くんは「へえ、さすがっすね」とその上下関係の意識に感心している。
「別に俺だって、臭わなけりゃ視界で吸うなとは言わねーよ。でもアイツは意外とそういうとこ気使うから吸わねーんだよな」
「で、アイツがどうしても煙草吸うのはイラついてるとき」
「……そういえば集会始まるまでも数えると三本吸ってました」
私と二人のときに一本、常盤先輩と一本、そして帰り際に一本……。苛立つと煙草が増えるんだという話は夏祭りのときもしていた。……それこそ夏祭りの日も、蛍さんがいるのに煙草に火をつけていたのは苛立っていたから、か。
九十三先輩も「あー、それ完璧に機嫌悪いね」と頷いた。
「ま、女と揉めたんじゃない? 日曜だし」
「日曜だとなんかあるんですか」
「デートしたいとかごねられたんじゃん? アイツマジで女癖悪いからね、ヤることヤって」そこで両耳が雲雀くんの両手に押さえつけられて「性欲満たしたらそれでオシマイ、彼女面なんてされたらマジでブチギレ」……後半がよく聞こえなかった。蛍さんがじろりと九十三先輩を睨みつける。