ぼくらは群青を探している
 なんてことを論理的に考えながら、雲雀くんの姿が見えなくなった後に家に入り、おばあちゃんに促されるがままにすぐにお風呂に入り、シャワーを浴びながらまた帰り際の雲雀くんのことを考えていて──やっと反省した。

 合点がいった、なんて一人で納得して満足してどうする。雲雀くんが帰り際に私を抱きしめたのは、私を好きだという感情に基づく行動にほかならない。抱きしめていいか心配されてたということより、雲雀くんが私を抱きしめようか思案していたことに重点を置くべきだ。……だって私は雲雀くんの彼女なんだから。

 ……そりゃあ、怒られもする。つい十数分前の自分を俯瞰(ふかん)して、シャワーを滝行のように浴びながら、恥ずかしさで緩みそうな唇を噛み締める。先輩達が定めた十一ヶ条、頭を撫でる以上のことをするなという一文に込められた意味をやっと理解した。


「……彼氏と彼女って……」


 一体なにをどこまでするんだろう……? 少なくともあの一文を定めた先輩達と雲雀くんの間には少なくとも共通認識があるのだろうけど……。

 覚悟が足りなかったといわれればそれまでの自分の思慮の浅さが恥ずかしくて、湯舟に浸かりながらぶくぶくとそのまま頭のてっぺんまでお湯の中に沈み込む。

 そもそも、先輩達のいうAAAってなんだろう。「Aより先を教えない」という一文があったことからすれば、きっとAの前にAAAがあるのだろうけど、果たしてAの続きはどこまでいくんだろう。アルファベットは二十六文字だから素直に考えれば二十六行程……。……二十六個も恋人の行程があるかな。

 ……いや、こんなことを考えている場合じゃない。黒烏は十月十日に期限を定めてきたわけだし、それまでにどうにかしないと。ただでさえ物証は時間が過ぎれば過ぎるほど少なくなるものなんだろうし……。

 ざぱりと湯舟から顔を上げた。雲雀くんには悪いけど、雲雀くんとの付き合いで悩んでる場合じゃない。目下の問題は、夏祭りの件の証拠だ。
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