ぼくらは群青を探している
「いやいや、ちょっとタンマ!」荒神くんは頬を押さえながら「三国にハンデ要らなくない!? いまめっちゃ痛かったんだけど!」
「三国ィ、なんかやってたの」
「……なにも。球技はわりと得意」
「ほらぁー! 男の顔に弾丸アタック打つ女にハンデは要らねーよ!」
「舜、女子枠でハンデやろうか」
「要らねーよクソ!」
仮想コートからはじき出されたビーチボールを持って帰ってきた荒神くんのサーブは下からだった。今度は大人しく返そう……と心がけて優しいアタックをすると、再び桜井くんが拾ったので桜井くんの攻撃だ。トスを上げれば、もう手加減はしてくれないのか、砂浜とは思えない足のバネで跳ぶ。
「行っくぞー、次、侑生!」
「いちいち宣言しなくていーんだよ」
パンッと軽快な音と共に飛んだボールを、雲雀くんは足で拾った。それなのに私の手元に返ってくるのだからすごい。そして雲雀くんのアタックもまた荒神くんめがけて放たれ、今度は顔にこそ当たらなかったものの、腕に当たって弾かれる。
「あ――」
そのままボールは海のほうへ飛んでいった。荒神くんの「あー!」という声は段々とデクレッシェンドしていく。ポテン、と波の上に乗ったビーチボールは、私達の気持ちなど知らず、ゆらゆらと呑気に揺られ始めた。
「舜、取ってきて」
「いや見ろよ! 海の上! もう無理じゃん」
「無理じゃねーだろ」
「無理っつーんだよこれを! 五月に海なんか入ったら死ぬわ!」
「二月じゃねーんだから。ほら早く行け」
「お前のボールが悪かったのに!」
ブツブツ言いながら、荒神くんはおそるおそる海の中へ向かい、膝まで浸かってしまったところで必死に手を伸ばす。指先を掠めたボールは荒神くんを弄ぶようにゆらゆらと遠く離れる。
「なぁー! 無理だって! これ以上行ったら俺死ぬって!」
「死なねーよバカ」
「つかパンイチになれば濡れなくていんじゃないの?」
「三国がいるのにそんな格好できるか!」
「私は気にしないよ」
「俺が気にする!」
一度浜辺に戻った荒神くんはティシャツだけ砂浜に脱いだ。大きめのティシャツ姿からは分からなかったけど意外と筋肉質だ。雲雀くんと桜井くんが小柄だから余計に際立つ。
ついじっと見てしまっていると、荒神くんは笑った。
「三国に視姦されてるーう」
「えっあっ」
「くだらねーこと言ってないで取ってこいバカ」
雲雀くんの近くにいたら蹴とばされていただろう、荒神くんは「うわーん寒いよー」なんて冗談めいた口振りで喚きながらザブザブと海の中へ入る。
「……三国、お前男兄弟いんの」
「え、あ、うん。兄が一人」
「……ふーん」
「んじゃ舜の体見ても欲情しねーな」
「三国ィ、なんかやってたの」
「……なにも。球技はわりと得意」
「ほらぁー! 男の顔に弾丸アタック打つ女にハンデは要らねーよ!」
「舜、女子枠でハンデやろうか」
「要らねーよクソ!」
仮想コートからはじき出されたビーチボールを持って帰ってきた荒神くんのサーブは下からだった。今度は大人しく返そう……と心がけて優しいアタックをすると、再び桜井くんが拾ったので桜井くんの攻撃だ。トスを上げれば、もう手加減はしてくれないのか、砂浜とは思えない足のバネで跳ぶ。
「行っくぞー、次、侑生!」
「いちいち宣言しなくていーんだよ」
パンッと軽快な音と共に飛んだボールを、雲雀くんは足で拾った。それなのに私の手元に返ってくるのだからすごい。そして雲雀くんのアタックもまた荒神くんめがけて放たれ、今度は顔にこそ当たらなかったものの、腕に当たって弾かれる。
「あ――」
そのままボールは海のほうへ飛んでいった。荒神くんの「あー!」という声は段々とデクレッシェンドしていく。ポテン、と波の上に乗ったビーチボールは、私達の気持ちなど知らず、ゆらゆらと呑気に揺られ始めた。
「舜、取ってきて」
「いや見ろよ! 海の上! もう無理じゃん」
「無理じゃねーだろ」
「無理っつーんだよこれを! 五月に海なんか入ったら死ぬわ!」
「二月じゃねーんだから。ほら早く行け」
「お前のボールが悪かったのに!」
ブツブツ言いながら、荒神くんはおそるおそる海の中へ向かい、膝まで浸かってしまったところで必死に手を伸ばす。指先を掠めたボールは荒神くんを弄ぶようにゆらゆらと遠く離れる。
「なぁー! 無理だって! これ以上行ったら俺死ぬって!」
「死なねーよバカ」
「つかパンイチになれば濡れなくていんじゃないの?」
「三国がいるのにそんな格好できるか!」
「私は気にしないよ」
「俺が気にする!」
一度浜辺に戻った荒神くんはティシャツだけ砂浜に脱いだ。大きめのティシャツ姿からは分からなかったけど意外と筋肉質だ。雲雀くんと桜井くんが小柄だから余計に際立つ。
ついじっと見てしまっていると、荒神くんは笑った。
「三国に視姦されてるーう」
「えっあっ」
「くだらねーこと言ってないで取ってこいバカ」
雲雀くんの近くにいたら蹴とばされていただろう、荒神くんは「うわーん寒いよー」なんて冗談めいた口振りで喚きながらザブザブと海の中へ入る。
「……三国、お前男兄弟いんの」
「え、あ、うん。兄が一人」
「……ふーん」
「んじゃ舜の体見ても欲情しねーな」