ぼくらは群青を探している
その騒ぎはおばあちゃんにも聞こえてはいたらしく、家の中に入ると「誰か怖い人が来とらんかったかいね」なんて、蛍さんは〝怖い人〟呼ばわりされていた。
「いや、怖……怖かったけど、別に怖い人じゃないよ……」
「英凜ちゃんが帰ってきたときもおったかね。もうおらんようなった気がするけど……」
あ、そうか、私の声は聞こえないから、蛍さんの怒鳴り声が聞こえたからって私が怒鳴られているとは分からないわけなんだな……。「というか、私が怒られてた。危ないことしたから反省しろって」と事情を説明しながら妙に納得してしまった。
それなのにおばあちゃんは無言になった。……家の前で後輩を怒鳴りつける先輩なんてろくな先輩じゃないと思われているのだろうか。
「……雲雀くん達の先輩でもあるし、普段は……そんなに怒らないんだよ、兄貴分……っていうかみんなのお兄ちゃんみたいな……」
「……そうかねえ……」
おばあちゃんは納得のいかなさそうな、釈然としていなさそうな様子で返事をして。
「……そしたら110番せんでよかったねえ……」
…………? …………なに? 言われたことの意味がそのまま通ると大変なことになるので私の読解力に重大な問題があると信じたかった。
「……通報したのおばあちゃん?」
「……怖い人が外におると思ってねえ」
「蛍さんになんて謝ればいいのそれ!?」
開いた口が塞がらなかった。よりによって、蛍さんが豊池さんの件でお礼を言ってくれた日になんてことを……! いや、でもお巡りさんは「女の子が暴走族に脅迫されている」と言っていたので、おばあちゃん以外にも通報した人はいたのかもしれない。いやそれにしたっておばあちゃんが通報したのは事実……。
そんな私の複雑な内心などいざしらず、おばあちゃんは白々しく、すっとぼけた様子で「だってねえ……」と頬に手を添える。
「英凜ちゃんが帰ってきたときにおったらいけんと思って」
帰ってきたときにいるどころか一緒に帰ってきた人……!! 明日から学校で会ったときに蛍さんにどんな顔を向ければいいのか分からず、思わず顔面を両手で覆った。どうしよう。
「でも桜井くん達の先輩なら優しいから大丈夫かね」
「……通報されて大丈夫な人なんていないと思うんだけど」
……ああ、もう、本当に。恥ずかしさとどうしようもなさでまた涙が出そうだった。本当に……、蛍さんにはよくよく謝ろう。
「いや、怖……怖かったけど、別に怖い人じゃないよ……」
「英凜ちゃんが帰ってきたときもおったかね。もうおらんようなった気がするけど……」
あ、そうか、私の声は聞こえないから、蛍さんの怒鳴り声が聞こえたからって私が怒鳴られているとは分からないわけなんだな……。「というか、私が怒られてた。危ないことしたから反省しろって」と事情を説明しながら妙に納得してしまった。
それなのにおばあちゃんは無言になった。……家の前で後輩を怒鳴りつける先輩なんてろくな先輩じゃないと思われているのだろうか。
「……雲雀くん達の先輩でもあるし、普段は……そんなに怒らないんだよ、兄貴分……っていうかみんなのお兄ちゃんみたいな……」
「……そうかねえ……」
おばあちゃんは納得のいかなさそうな、釈然としていなさそうな様子で返事をして。
「……そしたら110番せんでよかったねえ……」
…………? …………なに? 言われたことの意味がそのまま通ると大変なことになるので私の読解力に重大な問題があると信じたかった。
「……通報したのおばあちゃん?」
「……怖い人が外におると思ってねえ」
「蛍さんになんて謝ればいいのそれ!?」
開いた口が塞がらなかった。よりによって、蛍さんが豊池さんの件でお礼を言ってくれた日になんてことを……! いや、でもお巡りさんは「女の子が暴走族に脅迫されている」と言っていたので、おばあちゃん以外にも通報した人はいたのかもしれない。いやそれにしたっておばあちゃんが通報したのは事実……。
そんな私の複雑な内心などいざしらず、おばあちゃんは白々しく、すっとぼけた様子で「だってねえ……」と頬に手を添える。
「英凜ちゃんが帰ってきたときにおったらいけんと思って」
帰ってきたときにいるどころか一緒に帰ってきた人……!! 明日から学校で会ったときに蛍さんにどんな顔を向ければいいのか分からず、思わず顔面を両手で覆った。どうしよう。
「でも桜井くん達の先輩なら優しいから大丈夫かね」
「……通報されて大丈夫な人なんていないと思うんだけど」
……ああ、もう、本当に。恥ずかしさとどうしようもなさでまた涙が出そうだった。本当に……、蛍さんにはよくよく謝ろう。