ぼくらは群青を探している
「よっす。あ、やっぱ侑生と三国もいると思った」
「手洗ってこい。んでさっさと手伝え」
「なにこれ餃子?」
居間のテーブル上に並んだお皿、そしてそのお皿に敷き詰められた生の餃子を見て、荒神くんは眉を吊り上げた。
「なんでこんな作ってんの?」
「四人で割ったら大した数ねーよ」
「てかまだタネと皮あるから手洗って来てつってんじゃん。はやく」
ドタドタとやってきた荒神くんはまたドタドタと足音をさせていなくなり、すぐにまたドタドタと戻ってきて、桜井くんと雲雀くんの間に座り込んだ。
「これどうやって包むの?」
「見りゃ分かんだろ」
「見て分かったら聞かねーよ。三国おーしえて」
「言っとくけど、英凜の餃子が一番下手だよ」
……桜井くんに心の傷を抉られて黙り込んだ。荒神くんは「え?」と笑顔のまま首を傾げ、お皿に並んだ餃子を見る。そこにはいかにも製作者が三人いますと言わんばかりの三者三様の餃子が並べられている。中程度の大きさできちんと口を閉じられたもの、大振りでタネはパンパンだけどなんとか口は閉じられているもの、そして大きさと口の閉じ方にばらつきがあるもの……。
荒神くんは首を傾げたままじっと餃子を観察した。
「……まあ、侑生は手先器用だもんな。このピターッと揃ってんのは侑生のだな」
「正解」
言いながら、雲雀くんは新しく包んだ餃子をお皿の上に置いた。
「んでー、昴夜は飯は上手いけど別に手先器用じゃないもんな。あと男飯って感じがする。このデカいのだな」
「せいかーい」
「……ってことはこれ三国か……」
「……剥がれてるところは見つけたらくっつけ直してもらえると」
荒神くんの眉が、悲痛そうとは言わずとも、少しだけ切なそうに八の字になった。雲雀くんと桜井くんと一緒に餃子を包んで、それで一番下手なのが私だなんて、女の子として泣けてくる──きっとそんな気持ちを、荒神くんは私の代わりに顔に出してくれているに違いない。
「だいじょーぶだいじょーぶ、俺手先不器用だし、餃子とか包んだことないし」
それは私に対するフォローなのかなんなのか。フォローされているとしても、荒神くんが私より餃子を包むのが下手なんて事実は私の地位を左右しない。
ただ、実際荒神くんの餃子の包み方は下手だった。少なくとも私の地位がこれ以上下がることはないようでホッとした。包み終わった後、焼きを担当する桜井くんが、フライパンに餃子を並べながら「これ剥がれてんの舜だろ!」と苦情を口にしていたくらいだ。でも私の餃子も辛うじて口だけは閉じましたなんて有様なので、私は何も言えない。
「舜、手先不器用なのになんで女子にモテんの?」
「手先の器用さなんて関係なくね? でも侑生は器用だよなー」
雲雀くんは無言だったけれど、言ってる傍から片手で卵を割っている。片手割りなんて料理人にしかできない技だと思っていたらそうでもないらしい。