ぼくらは群青を探している
 そんなことを考えているうちに、桜井くんの飛び膝蹴りがゴリラ(雲雀くんもゴリラ呼ばわりしていたし、もうゴリラでいい)とは別の一人に炸裂(さくれつ)した。それを見てほっと一息――つく間もなく、今度は雲雀くんがこっちに向かってすっ飛んできた。砂の上だというのに、ドンッと鈍い音と共に雲雀くんが転がり、私達からほんの一メートルかそこら先で咳き込む。私が駆け寄ってしまうと思ったのか、荒神くんには腕で背後に留められた。


「あららぁ、雲雀くん、砂も滴るいい男ってか?」


 もともと海水に濡れていたせいもあって、雲雀くんは砂まみれだった。辛うじて砂がくっついていないマウンテンパーカーで顔を拭いながら「うるせー」と小さく毒づく。でもダメージが残っているのか、起き上がらずに膝をついたままだ。

 おそらく雲雀くんをぶっ飛ばした黒鴉の人が「いやぁ、マジ綺麗な顔してんね、男なのがざーんねん」なんてからかいを口にし、頬を軽く手の甲で拭いながら歩み寄ってくる。


「うちの春日(かすが)さんがさあ、中学ンときから雲雀くんに目つけてたんだってさ。黒鴉(レイブン・クロウ)に来たら可愛がってやるって――」


 その顔に向けて、雲雀くんが手に握りしめていた砂を放つ。


「イッテ――」


 目さえ潰せば隙だらけ、そう聞こえてきそうなほど鮮やかに素早く、雲雀くんの膝は相手の鳩尾(みぞおち)に容赦のない一発を食わせる。その人が(うずくま)りながらなにかを呟けば(多分、やり方が汚いかとかなんとかだったと思う)、雲雀くんが更にその横面を蹴り飛ばした。


「だったら五人も六人も連れてくんじゃねーよ、クソ。おい舜!」

「なんだよ!」


 振り向いた雲雀くんはこちらに向かって怒鳴るので、荒神くんの後ろで私が身を(すく)ませてしまった。


「んなとこで木偶(でく)やってねーで三国連れて逃げろ! バカかテメェは!」

「逃げられたら逃げてるからね? 逃げらんねーからここにいんだよ!」

「使えねーなマジで!」


 そんな雲雀くんの隣に、今度は桜井くんが転がってきた。桜井くんの綺麗な金髪も砂まみれだったけれど「うぇー、ぺっぺ」なんて余裕ありげに起き上がる。


「おい、お前がこっち来てどうすんだ」

「こっち来ないとどうしようもなくて。だって見てみ、ご新規さん来たぜ」

「うげぇ」


 呻いたのは荒神くんだ。でも私だって呻きたかった、だって歩道には「あれぇ、桜井くんじゃん」なんて楽しそうな声を発する二人組がいるのだから。歩道に残っていた二人と何か話しているし、十中十、黒鴉(レイブン・クロウ)の仲間だ。


「……残り六人ってところだな。三人ずつやれるか?」

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