ぼくらは群青を探している
「いや無理じゃね? つか普段ならいけるけど、砂浜ってマジで足場悪いし、あっちこっち隙だらけだし、三国守んなきゃだし、冷静に考えて無理」

「はーい、俺も守ってくださーい」

「お前は盾になってろボケ」


 当然のように荒神くんは参戦しないし、二人もその前提だしで、おそるおそる背中から荒神くんを見上げた。荒神くんはこんな時まで「三国、意外と可愛い角度分かってんじゃーん」なんてふざけるので雲雀くんの後ろ脚に蹴られた。


「……あの、荒神くん……その、なんの力にもなれない私が言うのもなんだけど、こう、なにか二人の助けは……」

「無理無理。いや全く無理とは言わないけど、俺はあの二人と違って一対一が限界。三国守りながらとか無理」


 三本目の矢を打ち込めばどうにかなるのではと思ったら、どうやら桜井くんと雲雀くんが規格外らしい。なんなら荒神くんは「それに」と真剣な顔で続けた。


「俺は女の子と仲良くする担当だから、そもそもどっちかいうと弱め。喧嘩とか野蛮なことはアイツらにお任せ」

「そんなこと言ってる場合じゃないじゃん!」


 それどころか、私と荒神くんはセットで守られる対象らしい。お陰で柄にもなく声を張り上げてしまった。


「どうすんの!? これ絶対絶命じゃん!? 埋まってる人を差し引いたって残り4人、あそこのバイクの二人も合わせて六人! 砂浜なんてただでさえ満足に走れないし、それなのに狙いすましたみたいに歩道で二人待ち受けてるし、なんならバイクがいるし! もう冗談じゃなく泳いで逃げなきゃいけなくなるじゃん!」

「三国、めっちゃ喋るじゃん」

「真面目に言ってるんだよ私は!」


 桜井くんの丸い目がますます丸くなったし、雲雀くんでさえ眉を吊り上げたけど、本当に私は真面目に叫んでいるのだ。いや、泳いで逃げる手段はとりたくないけれど。


「余裕そうだねぇ、おふたりさん」


 ゴリラがニタニタ笑いながら煙草に火をつける。まさしく、ゴリラこそ余裕そうだった。


「さっきも言ったけどさあ、別にお前らに喧嘩売りに来たわけじゃないんだワ。黒鴉(レイブン・クロウ)に入らないかって誘いに来たんだけど、どう?」


 蛍さんと同じ、チームへの誘い。本当にこの二人ってモテるんだな……と緊張感のないことを考えてしまっていると、それが伝わったのか、桜井くんも緊張感のないいつもの表情で「やー、無理無理」と手を振る。


「だっておたくのリーダー、春日さんだっけ? 手出すのに男も女も関係ねえっつー話じゃん? そんな春日さんの下なんかに入ったら侑生のケ──イッテェ!!」


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