ぼくらは群青を探している
 そして――分かっていたこととはいえ、私は五組のグループを前に、立ち尽くす。

 灰桜高校は、荒れ狂ってる部分とそうでない部分とが混在されているけれど、それは色々な側面から厳格に区分けされている。そのひとつが特別科と普通科という区別で、一組から四組は特別科、そして五組と六組は普通科だ。

 普通科を選んだことを一瞬で後悔したくなるほど、左右の違いは歴然としていた。五組では、椅子に座っているとは到底思えない態度で「でさー、俺は言ってやったわけよ、文句あんなら金持ってきてから言えよって」「カワイソーだな、ないから言ってんだろ」と恐喝(きょうかつ)かなにかの犯行告白みたいな話をしていた。

 本当に後悔した。うっかり選んだわけではなく、自分できちんと丸をつけたときの光景を脳裏に浮かべながら、この普通科を選んだことを後悔した。いくら玉石の石側といったって、不良が多いといったって、犯罪者集団がいるとは思わなかった。想定が甘かった。あの時の自分の頭を後ろから叩いてあげたい。


「オイ、どけよ」


 ほらどやされた! ヒッと怯えて飛びのきそうになったけれど……、私ではなく、犯行告白じみた話をしていた男子達が、ガタガタッと音を立ててパイプ椅子から立ち上がった。


「……なんだコイツ」

「しっ、雲雀(ひばり)だよ。目つけられたら厄介だ」


 彼らの目線を追って振り返れば、そこには一人の男子が立っていた。

 まるで狼だった。そのくらいきれいな銀髪だった。ワックスかなにかでセットされたその髪には、まるでチャームポイントのように赤いヘアピンが止まっている。そして耳にはこれでもかというくらいピアスがくっついていた。

 更にヤバそうな人が出てきた……。さっきから後悔しっぱなしなせいで、私の内心は今すぐ回れ右して家に帰りたい気持ちでいっぱいだ。

 ただし、その「雲雀」という名前の狼は、私を無視してドカッとパイプ椅子の一つに腰を下ろした。途端、彼の周辺に座っていた生徒達は慌てて列の反対側に避難した。まるで下手くそな人がやるマインスイーパのように、彼の周りはぽっかりと席が空いた。


侑生(ゆうき)、おはよー」


 その空白が埋まったかと思えば――今度は金髪だ。金髪がやってきた衝撃に耐えられず、パイプ椅子はガタガタッと揺れる。二人は友達に見えたけれど、銀髪は金髪を見るなりしかめっ面をした。「侑生」と呼ばれた銀髪はその金髪を振り返って「昴夜(こうや)、お前なあ……」と呆れた声を出した。


「お前、十二時半に校門つったろ。何してたんだ」

「え、来なかったのはお前じゃん、忘れてんじゃねーよ」

「何言ってんだバーカ。お前いなかったじゃねーかよ」

「いたじゃん! 侑生が来なかったせいで上級生に絡まれて大変だったんだぞ! 見てこの汚れ! 新品なのに!」

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