ぼくらは群青を探している
 そしてなにより、この中にいると明らかに浮いていた。というか、私とこの能勢さんだけ、見た目があまりにもありふれた高校生だった。改造もなにもされていない制服と黒髪のせいなのだろうけれど、ピンクブラウンの髪に刺繍入りの学ランを着ている蛍さんの仲間には到底見えない。

 なんだか不思議な人だな……と不躾(ぶしつけ)に観察してしまっていると、その能勢さんは穏やかに目尻を下げて笑った。


「三国英凜ちゃん? はじめましてじゃないんだけど、はじめましてって言ったほうがいいかな?」


 その声はハスキーで、桜井くんや雲雀くんの声が子供っぽく思えた。

 ふるふると桜井くんの腕の中で首を横に振る。海で会ったときは顔は分からなかったけど、あの時は蛍さんとこの能勢さんもいたからこそ、あのゴリラ達が蜘蛛の子を散らすように逃げていったのだと考えると、あれをカウントしないのは失礼な気がした。


「……こんな形で、すみません。三国英凜です」

「女の子がそんなこと気にしないでいいんだよ。むしろ、新庄に誘拐されて永人さんを呼ぶのは賢かったんじゃない?」


 なんとなく、本当になんとなくだけれど、それは安心する声だった。声の高さか、喋り方か、その両方かが絶妙に心地が良かった。


「永人さんもお気に入りなことだし」

「そういう話じゃねーよ、俺は対価はキチッと貰う主義だしな」


 私はバイクの上に横向きに載せられた。誰のバイクか分からずに辺りを見回すとバイクは二台しかない。雲雀くんと桜井くんは学校にバイクでは来ない、と考えるとこれは蛍さんと能勢さんのものだろう。


「さて、三国」能勢さんの隣で蛍さんが腕を組み「この間言ったとおりだ、俺は群青のメンバーじゃないヤツは助けない。この意味が分かるな?」


 群青のメンバーでないのであれば、助けない。逆に言えば、助けるのであれば──。


「桜井くんと雲雀くんは、私のせいで群青に入りましたか」

「三国、そうじゃない」桜井くんが素早く訂正して「三国のせいじゃなくて、俺達のせいで三国が誘拐されて、だから俺達は群青に入ることにした。間が抜けてる」

「……雲雀くんみたいな喋り方するね」

「……確かに俺にしては理屈っぽいこと言ったかも」


 むむ、と口角の一方を下げて眉間に皺を寄せる表情は、間違いなくいつもの桜井くんのものだった。蛍さんの視線は桜井くんと私、そして雲雀くんを見る。


「今回の件の話をしよう。三国、お前から雲雀に宛てた電話で、コイツらはいよいよ自分達の手に負えないと判断したらしい。真っ先に俺のところに来やがった、群青に入る代わりに三国を助けてくれってな。お前から俺に宛てた電話は、コイツらが群青に入ると決めた後だ」


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