ぼくらは群青を探している
 群青とは、何なのか。そう問いかけた私に、蛍さんは、自分みたいなのが群れているだけだと言った。だから桜井くんも雲雀くんも――私も、群青に相応(ふさわ)しいのだと。

 私には、私と桜井くん達との共通点は分からなかった。むしろ私だけが異質に思えていた。私だって桜井くん達と同じだと思いたいのに、私だけが仲間外れに思えてならなかった。


「お前は、群青(おれたち)の仲間になる覚悟はあるか?」


 そんなもの、(つゆ)ほどしかなかった。

 記憶のフォルダに保存されてしまった、この倉庫内の光景が怖かった。新庄の顔が怖かった。耳元で永遠に(ささや)かれ続けているかのように鮮明に克明(こくめい)(よみがえ)る新庄のセリフも声も怖くて怖くて仕方がなくて、それなのにきっと何度も何度も自分の頭の中で再生できてしまうし、だからこそ忘れることができないと半ば確信できることが、私を一層恐怖で縛り続ける気がした。

 でも、群青にいることは、その怖さを誤魔化す方法のひとつだろうし、新庄の口にした「また」は、今後の私がどんな立場になってもなかったことにはならないのだろう。それなら群青にいるべきだし……、それに、しいていうなら、(つゆ)ほどなら覚悟があった。

 なにより、この人達の仲間だという言葉の響きが、ただただ耳に心地が良かった。


「……まだ、あるとまでは言えませんけど。仲間になるのに必要なら、持ちます」

「……いいね」


 蛍さんが口角を吊り上げたけれど、その笑みの意味は、分からなかった。


「正式なメンバー告知はまた後日。そん時は連絡するから顔出しな。で、今日は桜井、雲雀、お前らが三国を送れ。荒神、お前は知らねー、一人で帰れ」

「……はーい」


 ふと、蛍さんと荒神くんの関係に疑問が浮かぶ。蛍さんは、結局、荒神くんを群青には誘っていないのだろうか。そして荒神くんはなぜ、蛍さんに認識されているのだろう。認識でいえば、新庄も、桜井くんと雲雀くんと一緒にいるヤツとして荒神くんを認識していたけれど、それとは別に能勢さんは荒神くんと面識があったみたいだし……。

 いくつもの疑問が頭に浮かんで、そのまま答えを見つけられずに(ただよ)う。ぼんやりとしていると「つか、三国よお」と蛍さんが携帯電話を振った。


「お前、俺のケー番登録してないつってたろ。どうやって電話かけた」

「……覚えてました」

「あぁ?」


 蛍さんの眉が跳ね上がった。


「蛍さんが、手書きで番号を渡してくれたから、覚えてました。……あの時はまだ、私は蛍さんと関係のない人間だったので、登録する必要はありませんでしたけど、電話をする可能性はあったので」

「永人さん、三国、めちゃくちゃ記憶力いいんですよ」


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