ぼくらは群青を探している
蛍さんが執拗に私に忠告したのは、それでも桜井くん達が私と離れないか――桜井くん達にとっての私の重要性を確認するため。大して関わりのない私にわざわざ電話番号を渡した理由は、最終手段として私が蛍さんに助けを求めるように仕向けるため。だから電話番号を登録したのか確認した。
そしてその後に、私と荒神くんが拉致されて、新庄は、わざわざ私に携帯電話を返した。ろくに連絡をできる相手がいないとはいえ、桜井くん達が到着するまで、余計な手段は奪っておくに越したことはないのに、わざと携帯電話を返した――私が蛍さんに連絡が取れるように。
そして新庄は、私が蛍さんへ電話をかけていたと確認した途端、まるで、目的は達したかのようにいなくなった。
筋は通っている。新庄のセリフの中に、蛍さんの登場を懸念するようなものがあったけれど、蛍さんとの関係を誤魔化すためのものだったといわれても不自然ではない。蛍さんが、桜井くんと雲雀くんを群青に入れるために、そのための取引を持ち掛けるために、新庄と組んで、この誘拐を仕組んだのだとしたら……、話の筋が綺麗に通った。
ぞわりと、身の毛がよだつ。
私は、この人を、信用していいのだろうか。
「ああ、そうだ、言い忘れてた」
バイク音が空気を震わせる中、ピンクブラウンの髪が、海に沈む太陽に照らされ、淡く光る。
「ようこそ、群青へ」
それは、後戻りのできない三年間の始まりだった。