ぼくらは群青を探している
 先に口を開いたのは、銀髪のほうだった。その口が開かれた瞬間、ぎゅっと拳を握りしめる。


「席なら自由だぞ」


 ……怒られなかった。なんなら、まるで困っている私を助けるようなセリフに、少し面食らった。肩透かしを食らい、少し面食らった。おそるおそる、彼の座席の裏に貼られた紙を指す。


「……そこだけ、指定なので……」

「え、マジ?」


 銀髪の男子は身を乗り出してその張り紙を見た。そこには「代表者」とただのメモのような紙が貼られていた。当然、いろんな人に存在を無視されていたせいでしわくちゃだ。


「マジだ、気付かなかった。じゃ、ここアンタの席か?」


 銀髪は立ち上がり、すぐに私の席を空けて、なんなら金髪の男子を1つ隣に追いやった。


「なんの代表者?」

「……式の、挨拶」


 途端、銀髪のその人の目は、まんまるく、まさしく狼のごとく見開かれた。


「じゃ、一番で入ったのお前か」

「……たぶん」


 なぜ、不良がそんなことを気にするのだろう。現に、他の五組の人達は、声は聞こえているはずなのに何のリアクションもとらなかった。

 というか、この金髪と銀髪のコンビが現れて以来、まるで全員一斉に借りてきた猫のように大人しくなっている。もしかしたら、この二人は不良の中でもかなり悪い方向に有名なのかもしれない。


「えー、ださっ。侑生、試験終わった後は絶対自分が一番だって言ってたのに」

「うるせーな」


 ……インテリヤンキー? かなり悪い方向に有名なのかと思ったけど、もしかして頭脳派で有名なのだろうか。状況も立場も忘れて思わず首を傾げてしまった。


「でもコイツ、マジで頭いーんだぜ。多分コイツに勝ったの──」金髪少年は笑いながら「えっと、誰だっけ」……あまりにも唐突に自己紹介を求めてきた。


「……三国(みくに)です」

「ほーん。なるほど、三国な、三国」


 「座れば?」と椅子を指差され、おそるおそる座り込んだ。銀髪が、まるで獲物を品定めするようにじろじろと見てくるのに対し、金髪はまるで犬が飼い主でも見るかのような人懐っこそうな顔で私を覗き込んだ。


「俺、桜井(さくらい)昴夜(こうや)。よろしく、三国」

「……よろしく……」

「あ、こっちは雲雀(ひばり)侑生(ゆうき)。多分お前に負けたから拗ねてんだ」

「拗ねてねーよ。テメェはビリのくせによく言うよな」

「ビリって決まってねーから! ……多分ビリだけど」

「ほらみろ」


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