白雪姫は寵愛されている
「あ゛?…お前等、何やってんだ」
入ってきたのは難波先輩。一瞬で状況を判断したのか、直ぐに近づいてきてくれた先輩が私を救出してくれた。
「っっ…な、んばせんぱぃ……」
急にホッとして大粒の涙が一滴、二滴。
「おーおー、よしよし」
まるで子供をあやすようかのように、抱っこのまま背中を摩ってくれる先輩。心なしか横揺れしてくれている気がする。
「慶!何故貴方が千雪さんを抱っこしてるんですか!」
「慶!千雪に触るな!俺がする、寄越せ!」
ほぼ同時に聞こえた。
「…だってさ。どうする千雪ちゃん?」
首を左右に振る。
む、無理です。
無理です…!
「だとよ。諦めろ」
「……は?」
「……へぇ」
後ろから…とんでもないオーラが…。
後ろを向けそうにありません。
「お前等、殺気しまえ。学習しろ馬鹿共」
難波先輩は怖くない。
怖いものが何も出てないから。
「慶…それなら千雪さんを渡してくれませんか?千雪さんがいれば収まると思いますし…」
「ダメだ。俺に渡せ」
「何訳の分かんねーこと言ってんだ。殺気はそう簡単に出すもんじゃねーんだよ。千雪ちゃんがいるいない関係ねーだろ、馬鹿か」
「「チッ」」
ひ、ひぇ…。
「舌打ちすんな!そんなんするから千雪ちゃん怖がるんだろーが!!まず悪いと思ってるなら謝れ!」
「昴が悪い」
「仁が悪いんです」
「お前らなぁぁぁ!!」
恐ろしいことに難波先輩の怒りを買ってしまったらしい。私は逃げ場がなく、颯太くんが来るまでずっと涙目のまま説教を聞いているしかなかった。