白雪姫は寵愛されている


吃驚して離れようとしたけど押し返せない。


「さ、くやくん…?」


少しだけ冷たく感じる朔也くんの胸。
仁くんとは違うにおい。



「大丈夫だよ。俺には白雪だけだから」



耳元で囁く声とリップ音。
いつもより響くのは近すぎるから。



「っ…朔也くん…私、」

「俺はずっと白雪の傍にいる」

「だ、だめだよ!!」



押し返しても離れない朔也くんの力はいつも以上に強い気がする。



「私…朔也くんには幸せになってほしいの!…私の事はいいから。朔也くんは朔也くんの幸せを見つけて欲しい…!」



私がいるから大学を諦めて、就職してくれた。私の為にって言って、こんないいマンションにまで住まわせてくれて…それだけで私は十分なのに。


「朔也くんにはこれ以上我慢してほしくない…」


私のせいで沢山我慢しただろうから───────。


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