白雪姫は寵愛されている
二章

季節外れ




──────もう夏が終わった、はず。



「あっぢぃ!!!」



ワイシャツ姿の颯太くんが叫んだ。


相変わらず中庭の芝生でシートを敷いて食べる私達。いつの間にか習慣化してきた昼食休憩中に、じりじりと太陽が私達を襲う。

颯太くんの言うようにとても暑いのだ。


先週衣替えがあり冬仕様に変わったばかり。

…だけど、暑い。
日差しが夏のように痛い。



「あ゛──!クソッ!おちおち寝てらんねー!!」



ネクタイを解く難波先輩がイラついてる。かなり機嫌悪そう。

こうも暑いと寝にくいだろうから、当たり前だと思う。




昴くんもふぅ、と一息。
ワイシャツをパタパタと動かしていた。



「………、」



仁くんは無表情且つ無言。
かなり暑いんだと思う。



……だって私が膝の上にいるから。




「仁、いい加減千雪さんから離れたらどうです?」


ネクタイを緩め、腕まくりする昴くんが言った。髪を掻き上げた額に滲む汗が太陽の強さを物語ってる気がした。



「……嫌だ」


「千雪さんだって暑そうですが?」


「……千雪はやらない」




や、やらないとは何の事でしょう…?

…そ、それより、もう。



「じ、じんくん…あ、あついです…」



背中からお腹に回された手が暑い。
じんわりと私も汗が出てきたのだ。


我慢してたけど。やっぱり無理です。


朔也くんはよく”我慢”出来ますよね。私はこれで我慢の限界なのに…。



「うわっ!白藤!すげー顔真っ赤じゃん!!」

「おい、仁!千雪ちゃん熱中症で倒れんだろ!離れろ!」

「千雪さんが倒れてもいいのですか。早く退けてあげてください」

「………、」



全員に責められ、ようやく離れた。


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