白雪姫は寵愛されている

カナヅチ




…皆さん、泳ぐの上手なんですね。楽しそう。

泳ぎ出した四人に手を振って、パラソルの下でぼんやりと見ていた。


颯太くんは、


「日焼けしないぞ!?」


と言っていたけれど。


私はそれが原因でここに残っているわけじゃないんです。


もっと別の。もっと重要な事実があるから。



……あっ、



ふと、仁くんと目が合った。
水が仁くんの体のラインを滴り落ちて…、

はにかみ笑い。


ドキッ!


咄嗟に俯き、膝に顔を埋めた。



格好良すぎて眩しいです…。
離れていてよかった、です。

この距離でドキドキするのだから、近かったらきっと心臓が破裂しちゃいます。



「ん?千雪ちゃんは泳がねーの?」



難波先輩が戻って来ていた。
持っていたタオルを渡しながら頷く。



「えっと…私、泳げないので…」



もっと重要な事実、それは……、

泳げない。カナヅチだと言うこと。



頭が良くても運動神経は抜群に悪いのです。



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