白雪姫は寵愛されている
私と先輩だけしかいなかった。
皆から大分離れてしまったみたい。
こっちは浅瀬だからと、言われホッとする。
チャプ…、
先輩の手をぎゅっと強く握り、水の中に慎重に入って行く。
少しだけ温かい。
「いいか?まず10秒顔を…と、その前に」
私の長い前髪を先輩がピンで留められた。
視界が晴れて、さっきよりも明るく感じる。
…っっ…、
吃驚して俯く。
突然の事だったから。
「あ、と…悪い。嫌だったか?」
本当は少しだけ怖い…けど。先輩が私の為に付き合ってくれるんだから、そんなこと言ってられない。
それに…、
先輩達なら大丈夫。怖くない。
ふぅ、と深呼吸をする。
「だい、じょうぶです」
それを聞いた先輩が安堵の溜息を吐いた。
「んじゃ、10秒。顔付けてみるか。行くぞ?」
「は…はい!」
手が離れないように強く握りながら、勢いよく顔を水につけた。