白雪姫は寵愛されている



───────ザバッ!!


勢いよく飛び出し、先輩の首に手を回した。



「…っ、は!?」



いつもは驚く大きな声は私の耳には残らない。
難波先輩に抱き着いて、



「きゅ…急に離さないでくださいぃ!」



先輩の耳元で叫んだ。



「ち…、ゆきちゃっ…!?」



いつもの落ち着いた声色じゃない。
焦った様子の難波先輩だった。

でもそれは私も同じ───────、



「ダメなんです!本当に泳げないんですー…!」


「ま、ちょっと待て!分かったから!!タンマ!ちょ、っと!」


「離さないって言ったのにぃ!」


「まっ!…悪かった!俺が悪かったから離れ…!」


「先輩のう、うそつきぃぃー…!」


「待て!!動くな!!…仁に怒られっから!」



離れられない私と固まる先輩。


でも仕方がないじゃないですか。
怖くて離れられないんですから。



「っー…!あああ!クソッ!!」


「ひゃ!?」



突然体が浮いた。
水より上に膝がある。



先輩に膝を抱えられていたのだ。
浮かぶ体にバランスが取りにくい。



…っ、た、倒れそう…です!



前のめりに倒れて先輩をぎゅっと抱きしめる。頭から水に入るのが怖かったから。

胸に先輩の顔が当たった気がする。



「ッ────…!!千雪ちゃん、ストップ!」



言われた通りその状態で止まった。



「ち、がう!だから…その状態は困る…!」



…じょうた、い?
どういう事…ですか?


モゾモゾと聞こえてきた先輩の声。




「あ…当たるだろうが…」




あたる…?


「当たるって…何がですか?」

「っっ…、」


先輩の方に視線を向けると、顔が赤くなっている気がしたのは気のせいだろうか。



「…ちょっと、変える」


「きゃあっ!?」



先輩の肩に体が乗った。
俵を持つような持ち方。



「戻るから…動くなよ」


「???」



はてな以外出てこず。


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