白雪姫は寵愛されている
顔を隠したいし、溺れそうで怖いし。
仁くんなら離さないって分かっているのに。
反射的にしてしまった。
「…これで怖いのか?」
そう言ったのはきっとまだ私の足首ぐらいしか入っていないからだと思う。
「……慶と泳いでたんじゃないのか」
泳いでいました…けど!
難波先輩に離されたから、もしかしたら仁くんも離すかもと思ってます。
「…慶にもこれやったのか?」
こ、れ?
「……抱き着いたのか、」
それは────…、
手を離された時に思わずしてしまった。だから多分、同じようなポーズになってしまったかも。
小さく頷く。
「…そうか」
少し、元気がなくなった気がする。
「じんく…!?」
な、なんで進んでいるですか!?
「や、やめてくださ!」
「俺を見ろ、千雪」
み、見れません…!
だって止まることなく進むんだもの。
首にしがみつく手に力が入る。
「…千雪が俺の事見ないなら、このまま溺れることになるな」
ふぇ!?そ、んな!!
「いいんだな?」
だだだ…ダメです!!
直ぐに首から肩に手を移動させた。
抱き着くのを辞めてようやく見た仁くんの顔。
──────顔が近い。
数センチで、唇が触れてしまいそうなぐらい。
海の中じゃなければ、もう逃げてると思う。
でも、支えられている。
離れれば水に落ちてしまう。
この状態からは逃げられない。