白雪姫は寵愛されている


──────ボゴッ!





突然カクンとなった仁くん。



……ビーチ、ボール?



プカプカと私達の近くで浮いていた。


背後から勢いよく何かが…恐らくこのビーチボールがが仁くんの頭にクリーンヒットした。その当たった拍子に私の肩に埋まったのだ。


ど…どうして。
一体何処から…?


辺りを見渡した。



「…昴くん?」



砂浜の方で腰に手を当て笑顔…のような顔でこっちを見ていたのを発見した。

…多分、笑顔では無いと思う。
そう直感で感じます。


ジャブジャブと音を立て、ビーチボールを回収しつつも、私達の方にやって来た。



「すみません。すっぽ抜けてしまいまして…怪我はありませんか?千雪さん」



こ…こんなに綺麗に頭に当たるものなんでしょうか…。こんなに広い所にいるのに…。



「わ…私は無い、ですけど……」



絶対怪我したと思う方へ視線を向ける。


「………あ゛?」



顔を上げ、昴くんを睨む仁くんがいた。
凄く恐ろしい顔で────…。


ひ、ひぇ…。



「今からビーチバレーやりません?」



笑顔な昴くん登場。
こんな状況でどうして笑えるんでしょう。



「昴…わざとか?」


「さあ?何の事でしょう?」



こ、これは…!




「す、昴くん…!私やりたいです!ビーチバレー…!」




──────喧嘩が始まる5秒前。



睨み合う二人の間で小さくなりながら答えた。
昴くんは私に視線を向けると優しく微笑んだ。



「決まりですね。ほら仁睨まないでください。戻りますよ」


「……チッ、」



仁くんに抱えられたまま、砂浜の方に戻り降ろしてくれた。指の間に入る砂がちょっとだけ気持ち悪く感じる。



「千雪さん」




昴くんが私の肩にパーカーを掛けてくれた。



「あ、でも…」


「水着用のですからご安心を」




あ、それなら…お言葉に甘えて。


腕を通すと昴くんが上までしっかりとジッパーを上げてくれた。



そう言えば、仁くんが何か───…。



振り返って私は口を閉じてしまった。聞くはずだった話の続きは聞けないまま…慌てて前を向き直す。


…濡れた髪をかきあげていた。
それが艶っぽくて見てられない。



「千雪さん」



昴くんの手が触れる…瞬間、その手を払った仁くん。



「いいじゃないですか。僕にだって触れる権利はあるでしょう?………無くても触りますけど」


「あ゛…?」




喧嘩しないようにと配慮したはずなのに…どうして喧嘩しちゃうんですか…!


結局、努力虚しく。難波先輩が止めるまで口喧嘩は続いた。



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