白雪姫は寵愛されている

おでかけ




「────白雪、明日は暇?」



夕飯を終え、朔也くんが洗った皿を拭いている時だった。

プール疲れをした私は、あまりの眠さに思わず大きな欠伸中。思わずビクリとしてしまった。



「…えっと…うん。特に何もないけど…」



明日は日曜日。

特に用事は無い。仁くん達と会う約束もしていない。



「なら、一緒にお出掛けしない?」

「えっ?でも…、」



最近ずっと休日出勤だったのを知っている。


久々のお休みなのに、休まなくていいのかな?


朔也くんは水を止め手を拭き、私の目線まで屈む。




「久々にデートしよ?」


「ふふ…デートって」



兄妹なのに、デートって。

思わず笑う。



「やだ?」


「ううん…行きたい」



そう言うと、朔也くんは嬉しそうに笑った。



「それなら明日の用意しないとね」



そう言いながら拭いた皿を食器棚に戻していく。



「ふふ、明日の朝でも出来るよ」

「忘れ物するわけにはいかないだろ?」



本当に楽しみにしてるんだと思う。
いつもより動きが速い気がするもの。


可愛いなんて言ったら怒られるかな?


でも素早く片付け終わってルンルンな朔也くんを見てるとそう思ってしまう。


笑顔でちょっとだけ弾ませて歩いてるのも。
可愛い…なんて────、


「…あれ?」

「ん?どうかした?」



目の前を通り過ぎた朔也くんから、微かな匂いに違和感を感じた。だけどすぐに首を振って。



「…ううん。なんでもないよ」



と言った。



…微かだけど、タバコの匂いがした。


でも朔也くんは吸わないからきっと職場の人。昴くんが吸うから何となく匂いに敏感になったのかも。


いつもはしないから珍しいけど…。
付き合いで、っていうのもあるもんね。


それに、本当に微かだったから、
気のせいかもしれないし…。


だから、少しだけの違和感は、私の胸の内に取っておこう──────そう思った。


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