白雪姫は寵愛されている

カチューシャを買う朔也くん。
その横顔に周りは釘付けで…。

自分達の買い物を忘れて朔也くんに見惚れているようだった。



……っ、



視線が痛い。朔也くん向けられているのか私に向けられているのか分からない。


可愛い。みんなキラキラしてて。
こういう場所でも可愛い女の子。


私一人だけ浮いていてる。



「さ…くやくん。手離して…」



レジを終え、カチューシャを付けられる。
引かれる手と絡まったままの指先。


「朔也くん…!」


振り解きたくても出来ない。

立ち止まる朔也くんに合わせて立ち止まる。



「そんなに俺と離れたい?」




そう言って、



「……え?」



離れた。
手も、朔也くんも。



っっ…!



「さ、朔也くん!待って…!」



出口前は人で溢れていた。先に進み始めた朔也くんを追いかけるが、人がいて追いつかない。


「きゃ…!」


人の圧に負けて抜けたのは、見知らぬ場所。
朔也くんの向かった方向じゃないのは確か。


…朔也くん?どこ…?


カップル、友達同士で写真や動画を撮る人達。
笑っているのが全部自分に向けられたみたいで…、



っっ……怖い…、



「朔也くん……、」

「俺から離れたかったんじゃないの?」



しゃがむ私の前に影が出来た。
見上げるとそこに居たのは朔也くん。




「白雪、手繋ぐ?」




差し出される手。
朔也くんに赤くなる周りの人達と視線。


「…うん」


私は手を取って立ち上がった。
さっきと同じで手を絡められる。



「もう俺から離れたいとか言わないでね」



私は返事の代わりに、朔也くんの手をぎゅっと強く握った。


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