白雪姫は寵愛されている




「では、どうぞ~!」



キャストのお姉さんが笑顔で言う。
深呼吸後、ドキドキしながら乗り込んだ。


正面に朔也くん。
その反対側には私。

徐々に高い所に向かっていく───────。


「ひっ…!」


小さな声を口元を抑え、無理矢理止めた。


「白雪、怖い?」

「だい…じょうぶ」


これでも平然を装っているつもり。



「きゃあ!動かないで朔也くん!」



立ち上がろうとする朔也くんを必死で止めた。

どうしてそんなに余裕そうにしているのだろう。
私なんて口から心臓飛び出しちゃいそうなのに。


…お、落ち着きましょう。


他の事を考えてみよう。
例えば昨日の事とか……、


「白雪」
”千雪”


空耳で聞こえた私の名前が朔也くんの声と被った。

脚を組む朔也くんがいる。



「何考えてたの?」



と、唇を緩ませた。



「……別の事考えてた…」

「俺の事は?」

「え?」

「俺の事は考えてくれないの?」



風で微かに揺れるゴンドラに私は身体をビクリと動かした。



「…そっち行っていい?」



思わずバッと朔也くんを見る。



「っっ…だ、だめ…だよ?」



青ざめてる自分が手に取るようにわかる。
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