白雪姫は寵愛されている
──────…こ、こわい。
怒ってないのか、怒っているのか、その違いが全く分からない。これが普段からの声のトーンなのかも、全く分からない。
さっき出した声よりは少し高いような気がしたけれど…あ、あれはもしかして普段からの声なのですか…?
「おい、仁。もう少し優しい声出せ。俺らと同じ声じゃ怖がるだろ」
難波先輩が言った。
黙る八神先輩は考え事の後口を開く。
「…千雪」
「は、は…い…」
「仁、聞いてんのか。優しい声にしろって」
「……ち、千雪」
「…は……い……」
「馬鹿か!変わんねーだろ!」
「…………千雪」
「っ…ふぁ…い、」
「アホ!!さっきよりもこえーよ!!」
慌てたように駆けてきた難波先輩が思いっ切り八神先輩の頭を叩く。
ぺちん、なんて可愛い音じゃ無い。
かなり痛そうな音が鳴りビクッと体を振るわせた。
はぁ、なんて溜息を吐いた後で私を見る。
「たくっ…悪いな。千雪ちゃん」
「だ…だ、だいじょ…ぶ、で…す…」
「…全く大丈夫じゃねー事はわかったわ」
ガタガタ震えた。
殴るとあんな音が出るなんて知らなかった。
あれがもし当たったら…考えただけでゾクッとした。
「……難しいな」
「怖がらせる為に連れて来たんじゃねーなら努力しろ」
また大きな溜息を吐いた難波先輩。
八神先輩は口をへの字にしている。
「……わ、わたし…もう、帰り…」
私がいるべき場所じゃない。
早く出よう。
怖くてまた泣いてしまうそう。
立ち上がった時、手を引かれた。振り返ると八神先輩が私の手を掴んでいる。
「あ…あの…、」
「行くな」