白雪姫は寵愛されている
兄妹
────私は今、何をしているんでしょう。
さっきまで散々断っていたと言うのに。
今は…漫画本を読んでいるだなんて。
「は?漫画読んだ事ねーの?」
そう言われたのは数十分前の話。
目を丸くする難波先輩。
「え、えっと…私は小説の方が…好き、なので」
「あー、なるほどな?それならこれを機に見てみたらいい。面白いぞ」
そう言うと、漫画本をテーブルに置かれた。今流行っている漫画本みたい。折角だからと読み始め、いつしか私もその漫画の虜になった。
どうやら、ここに居る時は好きなことをしていいらしい。
静かな部屋で聞こえるのは秒針。
その音が段々と聞こえなくなるぐらい集中して読んでいた。次の巻に行こうとした時、腕からチラリと見えた腕時計、その針は18時を差していた。
「っ!ろ、六時!?」
「んぁー…、まだ六時か~」
寝ていた難波先輩は寝たまま背伸びする。
八神先輩も首をコキコキ鳴らしていた。
「帰らないと…!」
先輩達からしたら、まだ六時。
でも私からしたら、もう六時。
慌ただしくする私の手を掴んだ八神先輩は、「送る」というと立ち上がった。
「で、でも悪いです…」
「あいつらの中、突っ切っていけるのか?」
「……お、お願いします」
怖くて無理そうです。
…ここはご厚意に甘えてみるしかないみたい。
帰り際、
「また明日な、千雪ちゃん」
そう言って難波先輩は笑った。