白雪姫は寵愛されている
……見られてる。
朱雀の人達の視線。
今度は自分の足で歩いているのに。…難波先輩も”女性”がいるって事に驚いていた感じだったから、もしかしたらそれで見られているの?
耐えられなくなって、八神先輩の制服の裾を掴む。俯いてるのも怖いし、距離を取られるのも怖いから握った。
あれだけ逃げたがっていたのに、こんな時だけ縋るなんて…。自分でもそう思ったけど、恐怖には勝てない。
「ご、ごめん…なさい…その、少しだけ…」
「………あ、ああ」
怒られると思ったけど、先輩は何も言わなかった。
器が大きな人なんですね。
良かったです…!
ほっと胸をなで下ろした。
夕方の赤色お空をバックに停車中の車に乗り込んだ。
スクールバッグもある。
さっきと同じ車みたい。
乗り込むと、またシートベルトを着けてくれた。
「家、どこだ」
「も…最寄りの駅までで大丈夫です」
その言葉に曇らす顔。
「何かあったらどうするんだ?」
「だ…大丈夫です。兄と一緒に帰るんです…いつも、」
「兄?」
「はいっ。六つ上の兄がいるんです!」
先輩は難しそうな顔をすると運転手に「最寄りの駅まで」と言った。