白雪姫は寵愛されている
ぎゅっと目を瞑り俯く。
手の影みたいなものが見えて、その手が私を壁に押し付けられた。…でも痛みはなかった。それは多分、壁と私の身体の間に先輩の腕が入ったからかもしれない。
近付く身体。
バッグ一つ分の距離。
私の顎に手が当たり、大きく身体を揺らした。
怖かった。殴られると思ったし、酷い事を言われると思った。───────だけど一向に痛みがなかった。
……?、な、に…?
クリアな視界。
目の前の綺麗な顔。
恐る恐る目を開けると、先輩は私の前髪を上げていた。
「きゃあ!!」
驚いて思わずバッグを落とした、そのせいで距離がぐんと近くなる。胸板を押すがびくともしない。その間に穴が開きそうなぐらいに私の顔を凝視された。
眉間が凄く寄っている。
…私が押したから?
ちゃんと目を見てなかったから?
溜まるばかりの涙と、震えが止まらない体。
「…見つけた」
暫くの沈黙後、微笑みながら言った。