白雪姫は寵愛されている

飴を口に含み、ご機嫌な颯太くんと一緒に教室に戻ることになった。先輩達も「途中まで」と言いながら、付いてきてくれることに。


クラスに戻る途中で、難波先輩にある事をきいた。


どうやら颯太くんは【私を守る】ことになっていたらしい。遅刻するな、とまで難波先輩と約束していたとのこと。


それなのに遅刻した────、
と言う事でお怒りを受けたみたい。



「ちゃんと起きたんだよ!遅刻しねーよーにって!六時に!」


「…どうして遅刻したの?」



間を開けてふぅっと息を吐く颯太くん。深刻そうな顔をしている。

も、もしかして…事故に巻き込まれたとか…!?



「……道間違えた」


「「馬鹿か」」


道…、間違えた?



颯太くん曰く…目覚まし鳴らして六時に起きて七時前には家を出て。バイクに乗って学校に向かおうとしたら、一本道を間違えたらしい。

話を聞くに、毎度遅刻するのは毎度道を間違えるからとのこと。

そ…それで、停学期間が終わっても来てなかったって事…?



難波先輩は私に耳打ちで、


「颯太は極度の方向音痴だ。面倒だけど相手してくれると嬉しい」


と言った。


…方向音痴。しかも極度の。


今までの遅刻は全て方向音痴が招いたことだった。


未だに家から学校。学校から溜まり場まで約三時間は掛かるという。

ちなみに、颯太くんの家は学校から車で約5分。学校から溜まり場までは約30分らしい。そして彼はバイク通勤なので、三時間はかかるはずがないとのこと。

むしろ車よりも早いんじゃないか、とまで教えてくれた。

極度の方向音痴だけど。本人はそれをわかっていないらしい。



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