白雪姫は寵愛されている



……だから、間違えるんですね。


保健室から教室までの道のり。
階段を登るだけなのに。

何故か良く分からない所で曲がろうとしたり、用具入れの方に向かおうとしたり…みんなで移動しているのに、どうして間違えるのかと聞きたくなるぐらい、不思議なぐらい間違えていた。


”極度の方向音痴”は言い過ぎかと思っていたけど…そうでもないみたい。


そのせいなのかどうかは分からないけれど。途中までと言った先輩達は、私達を教室まで送ってくれることになった。


二人に深く頭を下げて、改めてお礼を言った。



「千雪」



紙袋を渡された。


帰りに八神先輩だけ購買部に寄っていた。
その時に持って出てきたもの。

八神先輩のお昼ご飯だと思ったけど、そうじゃないみたい。


受け取って中身を覗いてみる。



「こ…これ、制服…?」


しかも冬服が全部付いてた。
結構高いやつなのに。


「後で着替えろ」



態々私の為に、買ってきてくれたんですか?

八神先輩は次に颯太くんの方を向く。



「千雪のこと、頼むぞ。颯太」


「文月颯太!白藤を命に代えて!御守りするっす!」


「フッ…、」



笑う難波先輩と、呆れ顔というより心配そうな顔の八神先輩。それを跳ね飛ばすかのような満面の笑みの颯太くん。

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