白雪姫は寵愛されている
凄いです…まさか着用している方に出会えるなんて…。
彼は私と目が合うと、笑って灰皿にタバコを押し付け、立ち上がった。
……なんだろう?
今の…笑い方…。
「あなたが、白藤千雪さんですか?」
近づく彼。私に合わせて屈み、微笑む。
……この人も凄い美形な方。格好いいというより、綺麗が合ってるかもしれません。
「は、はい…」
「話は仁から聞いています。僕は久我 昴と言います。初めまして」
手を差し出された。
こ、れは…握手、ですよね?
その手を取ろうとした時、八神先輩が阻止した。
「…昴、千雪の手を潰す気か?」
つ…ぶす?
「はは、ばれちゃいましたね」
「え…、?」
目が笑ってない。
…冗談ではなく、本気だったんですか?
怖くて先輩の後ろに隠れる。
「はは…仁、コレのどこがいいんですか?ちょっと脅しをかけただけで、これって…喧嘩もろくに出来ないようですが?」
「…千雪に喧嘩させるつもりはない。俺が守る」
「それは足手まといになるだけです。もしかして…この女に何か秘密でも握られました?だとしたら早く手を打てばいい」
二人の低い声が反響する。
……足手纏い。
バンッ!、勢いよく開いたドア。
吃驚して振り返るとそこには颯太くんがいた。
「やっとついたー!今日は一時間で着けたぞ!やった!……って、あれ?何してんだ?仁さんと昴さん」
首を傾げた颯太くんに駆け寄る。
「お?おお!?どした!?白藤!」
「わ、わたしが…悪いんですー…」
「あわわわ!?泣くな!泣くなって!」
涙が出た。
分かってるんです。
分かって…いたんです。
当たり前の事。本当の事。昨日自分で思った事。それでも…やっぱり直接言われるのは切なかった。
すぐに近づいてきた八神先輩は、制服の袖で涙を拭う。颯太くんも焦った様子で私の背中を摩る。
その様子を見て、久我さんは大きく溜息を吐いた。