白雪姫は寵愛されている
……っ、
「…ごめ、んなさい……」
思わず出た言葉は久我さんには届く事はなかった。
「千雪、」
ポロポロと溢れる涙。
それをずっと拭ってくれていた八神先輩。
ふわっと足が地面から離れた。軽々と抱えられ、そのままソファに座らせられる。
隣には八神先輩。
「ごめん、昴が」
「い、いえ…私が悪い…ので、」
謝る難波先輩に、申し訳なさを感じた。
泣いてはだめ…久我さんの言うことは全て正しいもの。
「あいつは…昔、女に酷い目に合わされたって聞いてる。
俺も詳しくは知らないけどな。だから千雪ちゃんにもああいう態度を取ったんだと思う」
…酷い目に?
その言葉にピクリとした。
何故なら私も分かる気がしたから。
「昴は華月に通ってる二年。朱雀の参謀だ」
「…さ、んぼう…?」
「参謀っていうのは!朱雀の司令塔みたいな奴だぞ!」
颯太くんが教えてくれた。
「頭は良いが癖が強い。仁も俺も相手にしたくない奴だ」
難波先輩は苦笑いした。
相手にしたくない…人。朱雀の司令塔…。
「私…は、やっぱりだめなんです…ここにいれません…」
朱雀にはいないといけない人材なのだろう。もし私のせいで”抜ける”なんてことがあったら───────。