白雪姫は寵愛されている
「もう…お家に帰してください…」
朱雀の人達に恨みを買ってしまうかもしれない。
そんな事になったら私……どうしたらいいの?
朔也くんにもこんな事言えないよ……。
「っ、きゃ…!?」
突然覆いかぶさるように抱き寄せられた。
あまりにも突然で涙が止まる。
「…悪い。俺が急に連れて来たせいだ」
優しくて暖かい。
「でも、千雪にはここに居て欲しい」
「っっ…久我さんの言う事は正しいです。私は何も出来ません…」
この場所で役立つ事なんて何一つ持ち合わせていない。
「俺は千雪の傍を離れたくない。言う事聞けなくて悪い」
耳元で囁く八神先輩の声が鼓動を早くする。
容姿だけじゃなくて声も綺麗だなんて聞いていない。
吸い込まれそうになる瞳は、私の目を見ていて、顔を逸らしたくなる。
だけど…笑うから。
宝物を見るような目で私を見るから。
「俺は、千雪がいればいい。千雪が嫌なら族の総長も辞めれる。だから…俺の傍にいてくれ」
逸らせなくなる───────、
「仁、ストップだ」
ごつん、と八神先輩の頭上から拳が落ちた。
かなり痛そうな音がしたけど、先輩は涼しい顔。
「颯太が茹でタコになる」
顎で指差す先にいたのは真っ赤になった颯太くん。顔だけじゃなく、全身が真っ赤だ。
それを見て私もボンッと赤くなった。私自身ようやくこの状況に思考が追い付いた感じだ。
「千雪ちゃん」
ぽんっと頭に手が乗った。
「俺も千雪ちゃんといたいな、行動がいちいち可愛いし」
「あっ、と…!俺も俺もだぞ白藤!なんか妹出来たみてーだし!」
難波先輩に続いて颯太くんが言う。
どう答えていいかわからず、おろおろとしていると、八神先輩の手が私の頬に触れた。
自然と先輩の方に顔が向く。
「頼む。俺の傍にいてくれ」
ドキッ、
きっと先輩はわかっているんですね。
自分の顔が、綺麗だと言う事が。
だからそんな顔をするんですか?
だとしたら…酷いです。
「っ、は、い」
拒絶する事が出来ないじゃないですか。