白雪姫は寵愛されている
「まあ…確かに旨そうだな。千雪ちゃんって料理上手だな」
「そんな事ないですよ。ただ好きなだけで…」
昨日の方が自信作でしたし…結局食べれませんでしたけど。
珍しく寝坊をした朔也くんの為に、今日は急ピッチで用意したお弁当。質素な物になってしまったけど。それなりに美味しく出来ました。
「明日!明日は食う!!」
「おー、いいなぁ。俺も食いてぇな~」
「駄目だ。千雪の弁当は俺のだ」
…えっと。
「わ、分かりました。明日は…もっと多めに作ってきますね」
そんな私の言葉に三人はニコリと笑った。
明日から、大変なお弁当作りになりそうです。
それなのにちょっとだけ楽しみな自分がいた。
「あっ…!」
お弁当箱を仕舞う為にバッグを開けて気が付いた。そういえば今日返さないといけない本がある事に。一冊。バッグの奥底に眠っていた。
この間返却期限を過ぎたばかり。
もう一度そうなるわけにはいかない。
「ごめんなさい、本を返しに行かないと…」
「俺も行く」
八神先輩が言った。
「大丈夫です。先輩達の昼休みを取るわけにはいかないですし…」
というのは建前で。
新しく本も借りたいと思っていた。
最近帰りに寄れないから、今しか借りれるチャンスがないと思った。
「仁が行ったら千雪ちゃん、急がなきゃって思うだろ。ゆっくり見させてやれって」
「また前みたいになったら…」
「仁さん、白藤はこう見えてもちゃんとしてるぞ!」
二人の説得に、八神先輩は渋々頷いた。