白雪姫は寵愛されている
二人に何度もお礼とお辞儀をしてから、図書館へ向かった。
久々の図書館にドキドキする。
だけど急がなきゃって思った。
不貞腐れた八神先輩の顔が浮かんで…でもそれは怒っているとかそう言うのじゃなくて。ただ心配してくれているんだって思うから。
これ以上先輩に心配を掛けたくなかったから。
誰もいない雰囲気の中、返却ボックスに本を置き、続きの本を探す。場所は生徒専用室。制服の校章を読み込ませるとドアが開く特殊な部屋、そこにある。
えっと…、かの行。
か、き…く…あった!
誰にも取られていないことに感動し手を伸ばす。
────触れた。
誰かの手が。
慌てて隣を向くと、久我先輩がいた。
「せんぱ……あ、」
そういえば話しかけないでって言われてた。
慌てて口を閉じる。
「…あなたも本を借りに来たんですか」
こくん。
無言で頷く。
「それとも…僕に媚を売りにでも来ました?」
ぶんぶん。
左右に首を振る。
「……何か喋ったらどうです?」
ぶんぶん。
「……もしかして、昨日の言ったこと守ろうとしてます?」
こくん。
先輩から大きな溜息が聞こえた。
「何、律義に守ろうとしてるんですか。…いいですよ、喋っても」
そう言われて、口を開く。
「そういう訳で来たわけじゃないんです…本を借りにきただけで…」
「…どうだか、」
尖った口調にビクリと震わせる。
「ほ、んとうです。…その…女性が苦手だと聞きました。だから…私が嫌われてることも知ってます」
眉間にしわを寄せる久我先輩。
どうやら私の言葉が引っかかったらしい。
「…誰から聞きました?」
「な…難波先輩から少しだけ聞きました」
「チッ…何勝手に教えてるんですか、慶は」
舌打ちに吃驚して、スカートをぎゅっと握った。
嫌いな人間が同じ空間にいれば、更にイライラが増してしまうだろう。
──────でも、本が欲しい。