白雪姫は寵愛されている
「ずっと我慢して…甘えられず、寂しい思いをして、誰にも言えないまま…だったなんて…、」
私には朔也くんがいる。両親がいなくなっても、朔也くんがいた。
だから私は幸せだったんだ。
一緒にご飯も食べれて、好きな時に本を読んで、好きなことが出来て…それは全部朔也くんがいたから。
でも…先輩はずっと一人だった。
好きな事すら出来ずに…ずっと、ずっと。
そう思うと、涙が止まらなかった。
「…あなたは、」
先輩の手が私の頬に触れた。
涙を指で拭ってくれる。
「同情ではなく、素直に泣くのですね」
悲しく笑う先輩が見える。
「今まで、近寄ってきた女性は自分の事だけでした。自分が僕の一番になりたいと媚を売ってくるだけ。
頼んでもないのに、何かを作って持ってきてくれたり。物を盗られたり、他にも数人に無理矢理押し倒されたこともありました。
女性は皆、そうなんだと…思っていたんですけどね」
昨日の先輩じゃないみたい。
全然怖くない。優しい口調。
「フッ…、あなたを特別視する意味が少し分かりました。慶の言う通り、あなたは他のとは違うようですね」
そう言って離れる久我先輩の制服の袖を掴んだ。
目を見開き、首を傾げている。
聞いて良いのか分からない。
だけど………。
覚悟を決めて口を開いた。
「…わ、わたしは、お母様に似ていましたか?」