白雪姫は寵愛されている


「────…ん?」


先輩の間抜けな声が聞こえてくる。
分かってないような顔をする。



「私が…先輩のお母様と似ていて…だから…私を憎んで、いるのだと思いまして…」



恐る恐る聞いてみた。だけど中々返答がない。


「その、性格も同じでしょうか?それとも…見た目、ですか?」


ど、どうしよう。変な事を聞いたかな?



「…もしかして、僕が君を嫌う理由。それだと思ってたってこと?」


「ち…違うんですか?」



黙る二人。



聞こえたのは、噴水が流れる音だけ。


…あれ?


わ、わたし…また先輩を困らせているの?やっぱり先輩とは仲良くできないってことですか?



「ブフッ!!」


「ふぇ…?」



先輩が吹き出した。
盛大に笑い出す。


それはもう、笑い転げる感じに。大声で笑っていた。噴水の大きな音にも負けないぐらいの大声で。



「あ、あの…すみませ、」

「フッ…ハハ、違う…違うんです…よ…」



笑いを堪えようと必死の久我先輩。

落ち着きを取り戻した先輩は咳ばらいをする。



「そんなことないです。あなたは全く似ていない。それどころか、他の女性とも違う…、素敵な女性です」



そう言って笑った。

昨日みたいな作った笑顔な感じじゃなく、心から笑ってるような気がした。



「久我先輩…?」



眉間のしわもなくなって、優しい表情になってる。



「久我は、今住んでいる叔父の苗字なんです。だから、僕の名前ではない…、昴って呼んでください」


「…えっと…、す、昴先輩?」


「先輩もいりません」


「あ…っと、す、昴さん?」


「んー…、なんなら昴くんで、行きましょう」



ニコッと笑う。



「…す、ばるくん?」


「はい、なんですか?千雪さん」



私の手を取る昴くんは、嬉しそうに笑っていた。

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