白雪姫は寵愛されている
「────千雪?」
頭上から聞きなれた声がした。
ベンチに座った状態で、上を向く。
「八神先輩?どうかしましたか?」
息の切れている先輩は私を見ると、眉間にしわが寄った。
視線の先には私と…その膝に寝ている昴くんの姿。
「…なに、やってんだ?」
「そんなに急いでどうしたんです?仁」
起き上がる昴くんと少し顔が近くなる。
「千雪さん、何処まで読まれました?」
「あっ…!ここです!」
「ああ、そこですか。ここから更に面白くなりますよ」
「ほ、ほんとうですか!」
「でも僕はその前の一文が好きですね」
「わ、分かります!でも私はここも好きで…」
「ああ…良いですね。僕もここは痺れました」
一瞬二人の世界になってしまった。
…八神先輩の存在を忘れるぐらいに。
大きな舌打ちにビクッとして、視線を向ける。
や、がみせんぱい…。
「千雪、どういうことだ?二人で何してた?」
「ほ、本を読んでいたんです…その…、昴くんと…」
私が読んでいるあの本…実は昴くんも読んでいた。四巻を借りようとしたところ、私が借りてしまったらしい。